第50回 東京都民俗芸能大会より『江戸里神楽』出演団体インタビュー

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2019都民芸術フェスティバル 公式サイト

第50回 東京都民俗芸能大会より
『江戸里神楽』出演団体インタビュー

若山 修(わかやま おさむ)

若山 修さん
若山 修さん

江戸里神楽若山社中4世家元・若山胤雄の三男として昭和47年東京蔵前に生まれる。3歳の時、水道橋能楽堂にて舞で初舞台。11歳より高校3年まで観世流シテ方、関根祥六師に師事。
20歳より家の芸である江戸里神楽の活動を本格的にはじめる。
これまでに東京都、神田明神、浅草神社等各祭礼、劇場にて演奏。出雲大社遷宮、伊勢神宮にて奉納演奏。
NHK等TVラジオにも数多く出演。
ワールド神楽フェスティバル東京都代表、海外ジャパンフェスティバル(ドイツ・ベルリン)、ブルガリア公演など国内外で活動。
東京藝術大学非常勤講師。

第50回 東京都民俗芸能大会 ~人と神と動物たち~

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江戸里神楽とはどのような神楽なのでしょうか。

里神楽とは、神社の祭礼で奉納される神楽のことをいいます。里神楽は全国各地で行われていますが、東京に伝承されている神楽が江戸里神楽と呼ばれます。ほかの地域の神楽だと朝までゆったりと踊るようなところもあるようですが、江戸里神楽は古事記や日本書紀を題材にし、ストーリーに準じてキレよくスピーディーに行います。また、神楽は笛、大拍子、大太鼓の演奏で面と衣装をつけて演じられ、所作で表現する無言劇です。

江戸里神楽

若山社中の歴史や現在の活動についてお聞かせください。

若山家は明治末までは神楽師の家でした。大正時代に初代清胤が下町の祭礼囃子を修得してからは、若山家は神楽と囃子の双方を持つ専門職となり、4代目の胤雄が社中を結成して今にいたります。若山社中では体の動きを勉強するため日本舞踊や能を習っている人が多く、私も幼少から能を習っていました。舞を舞うときは体幹がぶれないようにして、足のさばきなどにも気を配るので、観る方からは「若山社中の神楽は能に近い。能風の舞振り」と言われることがあります。また、衣装も舞台などステージで行う際は能装束の業者にお願いして仕立てたものを着ますので、ますますそう見えるのかもしれません。奇をてらったものはやらず、伝承されたものを受け継ぎ精進しています。なお、舞のみ、囃子のみと分業制ではなく、全員が舞も囃子もできます。
普段は毎週木曜日に稽古を行い、依頼のあった場所で神楽を披露しています。催しによっては囃子だけを頼まれることもあります。恒例の活動としては5~6月に夏祭り、8~9月に秋祭りが集中するので、その時期は毎週のように祭りに呼ばれ、ときにはダブルヘッダーの日もあります。千代田区の神田明神、浅草の浅草神社、赤坂の日枝神社、台東区の鳥越神社などは毎年神楽を行っている神社です。

江戸里神楽は30代、40代になってからでも始められるものですか?

長くやっている人が多いものの、ある程度年が進んでからでは挑戦できないという芸能ではありません。ひとりでも多くの方にやってもらいたいというのがわれわれの思いでもありますから、あくまでも本人のやる気次第です。ただ、若山社中に入るには特別な試験があるわけではありませんが、家元から舞や囃子が一定のレベルに達したと認められる必要はあります。とはいえ、最初は誰でも初心者ですから、興味のある方はどんどん問い合わせていただきたいですね。

国の重要無形民俗文化財に指定されている四流派のひとつとして、どんなことを意識して活動されているのでしょう。

里神楽が何なのかわからないという人が多いにも関わらず、それを説明する機会がなかなか作れない、得られないということが常にジレンマです。講演会などで話せる場があればいいのですが、なかなか実現しにくいのが現状です。だからこそ直接見ていただくことが重要なのですが、その点ではほかの伝統芸能よりも神楽は敷居が低いですよね。歌舞伎や能楽は劇場や能楽堂に足を運ばなければ見られませんが、神楽は祭りの際に神社に行けば無料で見られ、しかも途中から見てもいいし途中で帰ってもいいわけでしょう。神社は全国各地にありますから、多くの方に祭りに足を運び、そこで神楽を見ていただきたいと思っています。そうすれば神楽というと「おかめとひょっとこの"お神楽"」というイメージのみを持っている方の固定概念も覆されるでしょう。最近は祭りを訪れる外国人も増えました。われわれが海外公演をする機会もあるのですが、祭りでも公演でも、みなさん非常に熱心に見てくださいますね。

江戸里神楽を披露する場所が東京芸術劇場のプレイハウスのような劇場の場合と神社の場合では、何か違いは生じるのでしょうか。

祭りは屋外のため、急な雨などさまざまな理由で衣装が汚れることがあるので、普段用の衣装で舞いますが、ステージの場合はもっと見た目も華やかな衣装を身につけます。舞う広さについては「広ければいい」とは一概には言えません。というのも、神楽は「畳1枚の上で舞え」と言われれば、その中でやれなければいけないものだからです。だから狭いところでは狭いなりに舞います。広いステージでは端から端まで使うと逆に舞台が締まらないので、神社で舞う時よりは広く両角は取りますが、あくまでもほどほどです。それでも舞を舞う者にとっては、伸び伸びとできるのは確かですね。
また、ステージだと演者はおのずと力が入るので、演目の時間が普段より若干長くなります。というのも、いつもと違うことをちょっとやろうかなという色気が出るんです。神楽はそれが許される芸能で、「絶対こうやらなければいけない」というものは、基本的なもののみなのです。そこさえしっかりしていれば、「今回こうやってみようかな」という試みが許されます。やってみたもののあまり効果がなかったら次からはやらなければいいし、うまくいったら次からはそれもひとつの型となるという、大変自由度が高い芸能です。そんなわけで、いつもより少し長くなるかもしれません。

今回の都民芸術フェスティバルで上演される演目はどのようなものでしょうか。

第50回 東京都民俗芸能大会 ~人と神と動物たち~
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今回の民俗芸能大会は「神と動物たち」がテーマということなので、『神剣幽助』という演目を披露します。これは『小鍛冶』の副題のほうがよく知られているかもしれませんね。あらすじは、三条小鍛冶宗近という刀鍛冶職人が、勅使から刀を打って献上するよう命じられます。宗近は刀を打つ前にお清めの舞を舞いたいと、家来に刀を打つ道具を持ってきてもらいます。ちなみに神楽ではちょっとおかしみのある顔をしている役を「もどき」と言い、この演目では家来がもどきに当たります。もどきは道具を運んでくる際に舞うのですが、もどきの舞は手踊りといってかなりくだけていて、それがひとつの見せ場となっています。道具を受け取った宗近が刀を無事に打てることを祈念して舞うと天狐が現れ、スピーディーな舞を舞います。すると今度は天狐を家来にしている稲荷大神が片手に刀を打つ槌を持って現れ、宗近と共に刀を打ってくれ、無事に刀ができあがるという話です。ですから今回は稲荷大神、天狐、宗近、もどきの4人が登場して全員が異なる舞を舞います。本来の里神楽のようにちょっとくすりとするような場面は少ない代わりに、舞の違いに注目して見ていただくとお楽しみいただけると思います。

都民芸術フェスティバルのウェブサイトをご覧のみなさまへメッセージをお願いします。

古典芸能と聞いて思い浮かべるのは歌舞伎や能、狂言でしょうが、里神楽はそれらに負けないくらいの面白さやクオリティの高さがある芸能だと思っています。百聞は一見に如かずですから、まずは見ていただいて、正直な感想をいただければと思います。ぜひ気軽な気持ちでいらしてください。ご来場をお待ちしています。

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