2019都民芸術フェスティバル 公式サイト
現代舞踊公演『1200seconds ~踊~ Triple Bill』
稽古場訪問&インタビュー
現代舞踊公演『1200seconds ~踊~ Triple Bill』
木原浩太『回(ぐるり)』
木原 浩太(きはら こうた)
木原 浩太さん
加藤みや子ダンススペースメンバー。
Co.山田うんに2012年より参加。両カンパニーの国内外のツアーに参加。
日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース卒。日本大学総長賞受賞。全国舞踊コンクールを始め、第1位グランプリ受賞多数。マシュー・ボーン、GQ、西島数博など数多くの振付家の作品に参加する傍ら、自作品も発表し、単独ソロ公演を行う他、海外フェスティバルへ招聘出演など活動の幅を広げている。
文化庁委託事業「2016時代を創る現代舞踊公演」にて上演された作品「まる」は才気あふれる斬新な作品として評価され現代舞踊協会制定 平成28年度奨励賞を受賞した。
また、後進への振付作品がコンクール上位入賞するなど指導にも力を入れている。
今回の作品のテーマを教えてください。
テーマは特に設定していません。僕はもともと普段から「これがテーマだ」「これを表現したい」というものをあえて作らないようにしています。作品を創るときは常にそのスタイルなので、今回も『回 ーぐるりー』という言葉もなんとなく浮かんだものをタイトルにしました。ダンサーたちにも「この振りにはこういう意味がある」とか「この動きでこういう気持ちを表現して欲しい」と言ったことは言わず、振りだけを伝え、解釈は各ダンサーに任せています。その結果、自分の望んでいる形に必ずしも合致するとは限らないものが生まれることもありますが、そこから生まれてくるものも面白く、毎回楽しいと思っています。お客さんに対しても同様で、自由にとらえて見ていただければいいなと思います。「ダンスにこういうメッセージを込めているのでそれを読み取ってください!!!」とは思わないので、面白い、つまらない、楽しい、そんなシンプルな感想を持っていただくだけでも十分です。その代わりと言ってはなんですが、タイトルだけはわかりやすさにこだわっています。例えば今回の『回 ーぐるりー』も、回るとか回転といったイメージがなんとなく思い浮かぶと思います。なので僕の作品のタイトルで想像付かなそうな言葉を使うことはあまりないかもしれません。また、作品づくりの際にテーマは持たないといいましたが、「こんな感じのことをやりたい」「これくらいの人数でやりたい」といったことは空想しています。がちがちに固めて作品づくりをしないということですね。
参加されるダンサーはどのような方たちでしょうか。
僕を含めて30名で、僕以外は全員女性です。いつも一緒に活動している人のほか、現代舞踊公演などで一緒に踊った人、以前から知っている人のほか教え子もいて、一緒に踊りたい人たちにお声がけさせてもらいました。全員知り合いなので和気藹々とリハーサルをしています。みな素晴らしいダンサーなので、彼女たちの踊りそのものが今回の大きな見どころといえます。
木原さんにとってダンスの魅力とはなんですか?
言葉が通じなくても伝えられることです。芝居だったら言葉ができないと通じないこともあるでしょうが、ダンスならば言葉が不要という点が、僕にとってのダンスの魅力です。体を使って表現しますから、普段から健康管理の一環として、ストレスを溜めないよう心がけています。だから食べたいものは食べるし、飲みたいものも飲んでいます。また、ダンサーとしてのモチベーションのために、コンクールにたくさん出ていた時期もあります。コンクールにはいつも「出るからには1位を取るぞ」という気持ちで臨んでいましたし、コンクールで残せた結果が間違いなく今の自分につながっていて、今の僕自身を作り上げてくれたと思います。
現在は指導者としての活動も多く、ちょっとしたきっかけを与えてあげるだけで生徒の踊りが見違えるほどよくなるのを目の当たりにすることに喜びを感じます。
都民芸術フェスティバルウェブサイトをご覧のみなさまへメッセージをお願いします。
ここまでの人数の群舞を創ることはなかなかないので、30人の群舞を見ていただけたらと思います!
平 富恵『FLAMENCO FLAMENCO ~日本発信~』
平 富恵(たいら よしえ)
平 富恵さん
小松原庸子スペイン舞踊団にて、スペイン舞踊全般を学ぶ。
1997年スペイン留学。NHK教育をはじめTVやCM出演など多方面で活躍。
2002年第1回日本フラメンコ協会主催フラメンココンクール優勝。2003年第43回カンテ・デ・ラス・ミナス国際コンクールにて日本人初のセミファイナル進出。審査委員長特別賞受賞。
2010年平富恵スペイン舞踊団公演「エル・スエニョⅡ」
2015年より文化庁プログラム「文化芸術による子供の育成事業巡回公演」にも選出される。また藤原歌劇団のオペラに招かれ振付・出演をするなどスペイン舞踊普及活動を積極的に展開する。
平成22年(第65回)文化庁芸術祭賞受賞以降、「SHAMBALA MOON」「Zodiac」「真夏の夜の夢」「Flamenco Flamenco」「RyojinHisho」「Hokusai Flamenco Fantasy」など意欲作を発表。
純日本的なテーマとスペイン的・フラメンコ的舞台芸術手法の融合を図る意欲的な作品を発表しアイディアの独創性、構成・表現力等が高く評価され、舞踊協会制定平成29年度 第18回河上鈴子スペイン舞踊賞を受賞。
平富恵スペイン舞踊研究所(千代田区)主宰。
今回上演される『FLAMENCO FLAMENCO ~日本発信~』はどのような作品なのでしょう。
今回の作品は、これまでに上演し好評をいただいた曲を複数組み合わせ、ひとつの作品にしたものです。タイトルにある「フラメンコ」はスペイン舞踊のうちのひとつです。また、作曲家ビゼーなど主にクラシック音楽に対して踊りを付けたものをクラシコ・エスパニョールと言い、私たちのカンパニーはフラメンコだけでなくこのクラシコ・エスパニョールもレパートリーとしています。今回は、タイトル自体はスペイン舞踊の代表格である「フラメンコ」ですが、フラメンコやクラシコ・エスパニョールなど多様な舞踊種類をミックスし上演します。多くの方はそれを見て「これがフラメンコなのかな?」と迷われると思います。けれどそれはフラメンコだけではない、スペイン舞踊ということなのです。ぜひひとつのジャンルにとらわれずにニュートラルな状態で見ていただければと思います。よく耳にする有名な曲なども使っているので、音楽も楽しんでいただけるはずです。また、フラメンコと聞くと「よくわからないけどバラの花とか赤、カルメン、闘牛とか?」と先入観でイメージされる方もいらっしゃるので、フラメンコの本当の面白さや醍醐味をわかりやすくお伝えすることを目指しています。「スペイン舞踊ってこんなものもあるんだ」と衝撃を受けていただけるような公演にしたいですね。
フラメンコはカンテ(歌)がとても大事なんですが、普通はスペイン語で歌われるので歌詞の意味がわかりません。そこで3年ほど前から日本語で歌うことに取り組んでいて、それらの作品で河上鈴子スペイン舞踊賞をいただきました。これは日本人だからこそできるフラメンコであるといえるでしょう。今回はその中からピックアップした日本語の作品もほんの少しですがご披露します。日本語カンテにより何かをイメージしていただければ嬉しいです。
平さんの振付の特色をお聞かせください。
わかりやすくて華やか、ですが作品のテーマと構成にわたしなりの哲学が込められているということですね。フラメンコとクラシコ・エスパニョールでは踊りの種類が異なります。フラメンコの踊りはうた(カンテ)とギターに寄り添った原始的なもので、クラシコ・エスパニョールは古典舞踊なので系譜的にバレエのように美しい型が中心になります。クラシコ・エスパニョールはバレエに影響を与えたと言われ歴史が古く、フラメンコのほとんどの動きやステップもここから派生しています。近年スペイン本国ではクラシコ・エスパニョールは、エスティリサーダといって、新たなジャンルとしてその可能性が再注目されています。ですからカンパニーではフラメンコだけでなく、そのフラメンコに大きな影響を与えた重要なクラシコ・エスパニョールも大切にし、発表していきたいと考えています。今回はとてもモダンな作品も厳選しました。日本のお客様は音楽的にアカデミックなものをとてもよくご存じなので、そういう方たちに舞台そのものを楽しんでいただける、そして「これがフラメンコ、スペイン舞踊なんだ!」とココロを揺さぶるような振付を心がけています。
平さんにとってスペイン舞踊の魅力、フラメンコの魅力とはなんですか?
スペインの音楽や踊りは、世界中のどの音楽や踊りとも違う気がします。ジプシー的というか、短調のメロディーは哀愁を帯び、独特の雰囲気があります。またフラメンコはリズムも非常に複雑で、シンプルな手拍子(パルマ)から生み出される超絶世界は人間の可能性とは…と思い知らされる瞬間でもあります。フラメンコは、うた、ギター、踊りの三位一体で一つの世界を表しています。日本は、世界中でスペインに次いでフラメンコ人口が多い国と言われています。これほど遠い国なのに日本人である私たちのココロを惹きつけるフラメンコにはどんな魔力があるのでしょうか?日本人の琴線に触れる何かが秘められていると思っています。わたしは、いまでもその不思議を探し続けていますが、スペイン語の歌詞の意味がわからなくても感動できるというのもすごいです。ならば、歌詞がわかればより感動が大きくなり、人々の心に響くのではと考えたのが、日本語の歌詞に取り組み始めた理由のひとつでもあります。
都民芸術フェスティバルウェブサイトをご覧のみなさまへメッセージをお願いします。
平富恵スペイン舞踊団『FLAMENCO FLAMENCO ~日本発信~』で、フラメンコをはじめとするスペイン舞踊をふんだんに見ていただける楽しい公演、情熱の舞台をご覧いただきたいと思います。みなさまどうぞ劇場に足をお運びください。
飯塚真穂『ruins ~今でも鳥は謳うのか~』
飯塚 真穂(いいづか まほ)
飯塚 真穂さん
上野由美子モダンバレエスタジオにて踊りを始める。
現在は、金井芙三枝舞踊団を経て、坂本秀子舞踊団に所属。
日本女子体育大学卒業、お茶の水女子大学大学院修士課人文科学研究科舞踊教育学修士課程終了。
文化庁派遣芸術家研修員としてフランスで二年間学ぶ。埼玉全国舞踊コンクール、神戸全国洋舞コンクールにて第一位受賞。
現代舞踊協会制定平成9年度新人群舞賞、平成14年度群舞奨励賞、さらに、文化庁委託事業「2017時代を創る現代舞踊公演」にて上演された作品「transition」は巧みな群舞構成が高く評価され平成29年度時代を創る現代舞踊公演優秀賞を受賞した。
近年の主な作品「After Effect」「城」「monologue」「garden」「Break Through」などを発表。
東京都立総合芸術高校(コンテンポラリーダンスコース)、Atelier de Ballet Feerie、大杉芸術学院等で講師を勤める。
今回の作品のテーマを教えてください。
テーマは簡単に言ってしまうと「破壊と再生」ですが、イメージは重層的です。タイトルの「ruins」には廃墟や遺跡、崩れていくといった意味があります。そういう状態に至るまでの人間の命の痕跡や力強さ、生命力、そして残された形あるもの、あるいは形のない空気感などをイメージして作っています。ISに破壊されたパルミラ神殿、壊れそうな寺院での鳥葬、ペトラ遺跡の土石流・そういった出来事にも影響されています。本番までは作っては壊し、壊しては作るということの繰り返しなので、現在は9割完成したと言えるし、まだ半分しかできていないとも言えますね。一度決めた振付でも、よりよいと思うものがあれば迷わず変更します。
今回のメンバーは舞踊団で一緒にやっているダンサーを中心に、外部の人にもお願いしました。衣装は3回ほど試作し、ようやく決まりました。衣装はデザインも製作も自分で行い、最後にダンサーにも少し手伝ってもらいます。踊りや衣装、音楽はセットなので、衣装を作りながら考えたり思いついたりということもあります。
音楽もリハーサルをしながら自分で曲を組み合わせていきます。今回の作品では、抽象的な感じの音もあれば宗教的な歌曲もあり、さらにそれらの音を重ねています。
群舞ならではの儀式的な要素や勢いと迫力、生命力といったものと、女性だけで踊ることで醸し出されるやさしさや儚さ、そしてそれらによって蠢く空間を見て頂きたいと思います。
作品の特色や作品作りの際に心がけていらっしゃることはなんでしょう。
わりと大人数での群舞作品が多いですが、一人ではできないことができるのが群舞の魅力です。作品を作るときに心がけているのは、最初からあまり情緒や表現的なほうに流れないようにすることです。動きのフレーズをいくつかを繋げてシーンを作って行きますが、最初はなんだかわからない…という状況です。動きの質感やタイミングを決めていく中でだんだん見えてくる、つかめてくる、という感じです。最終的には気持ちを込めて踊ったほうがいいのですが、それも作られたあるいは指示された感情表現ではなく、ダンサーの中から出てくる想いや願いを込めて欲しいと思っています。また、細かい形を揃えることが大事な時もありますが、そろえようとしすぎてセーブされてしまうものがあると思うので、勢いや呼吸をそろえるほうを重要視しています。
飯塚さんにとってダンスの魅力とはなんですか?
作品づくりの時間は、自分について、生きていることについて、世界についてといったことを考える時間のように感じていて、面白いなと感じます。同時に、私にとっては踊りが日常でありながら、踊ることで非日常の空間や現実ではないところに飛べる感じがする点も魅力ですね。長年踊ってきましたが、若い頃はセーブして踊っていた部分があったり、外側をきれいにしなければという思いがあったりしましたが、今はもっと内側から湧き上がるものに対して思い切っていけるようになったと感じます。
都民芸術フェスティバルウェブサイトをご覧のみなさまへメッセージをお願いします。
今回の作品は破壊と再生をイメージして作っています。ダンスそのものも作っては壊し、壊しては作りという創作過程を経ています。そして完成したと思った瞬間に舞台の上で消えていくという、リアルタイムで見ていただかないと感じてもらえないものがあると思うので、ぜひ劇場で体感していただきたいと思います。
ページの内容終わり