日本バレエ協会『白鳥の湖』全幕 稽古場訪問&インタビュー|2019都民芸術フェスティバル 公式サイト

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日本バレエ協会『白鳥の湖』全幕
稽古場訪問&インタビュー

日本バレエ協会『白鳥の湖』全幕

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演出振付 篠原聖一さんインタビュー

篠原聖一(しのはら せいいち)

篠原聖一さん
篠原聖一さん

両親の下、3才からバレエを始め、小林紀子バレエシアターに入団。1978年、日本バレエ協会新人賞受賞。同年、文化庁派遣在外研修員としてモナコに留学、その間ナンシー・バレエ団でゲスト・ダンサーとして活躍。帰国後は小林紀子バレエシアター他、数多くのバレエ団公演にて主演。1997年に再び文化庁派遣在外研修員としてサンフランシスコ・バレエ団、ネザーランド・ダンスシアターにて振付を学ぶ。典型的ダンスール・ノーブル・ダンサーとして活躍する一方、振付家としても力量を発揮し、発表する作品の評価は極めて高く、我が国を代表する振付家として活躍中。
2002年、橘秋子賞優秀賞受賞。2006年、猪原聖一リサイタル(Dance for Life)公演「ロミオとジュリエット」全幕において芸術祭大賞受賞。2009年、第35回、橘秋子賞特別賞受賞。2017年、河上鈴子記念現代舞踊フェスティバル賞受賞、2018年、東京新聞制定舞踊芸術賞受賞。

演出・振付を担当される「白鳥の湖」の、篠原さんの振付の特色などをお聞かせください。

現在、「白鳥の湖」はイワノフとプティパのご両人が作られた振付をベースにして多くの方が振付をしていて、僕も過去に何度か振り付けています。今回もイワノフとプティパをベースにした上で、そこに独断的な解釈を加えることで新しい「白鳥」を生み出したいと思っています。「白鳥」の1幕と3幕は、踊りとマイムがあるという古典形式の伝統を踏まえて構成されています。そして2幕と4幕はイワノフの傑作と言われているのですが、ロマンティックバレエの本質のひとつであるバレエブランが全面に出ています。白いチュチュやロマンティックチュチュを着て踊るので、すごく幻想的です。チャイコフスキーの音楽も大変抒情的なので、僕も2幕と4幕はそれをベースに作っています。
それから今回はちょっと視点を変えて、ロットバルトを少しクローズアップして演出しています。そこが僕の新しい演出のひとつですね。最後はどうなるか、実際に観ていただきたいです。

今回のようにさまざまなバレエ団に所属している方々が集まっている場合、演出の難しさはあるのでしょうか。

確かに難しい面はありますね。今回の公演に参加する人は、「白鳥に出たい」という気持ちでオーディションに参加してくれたわけですから、それぞれの思いはすごく強いわけです。また、色々なバレエ団やスタジオから集まってきているので、メソッドやスタイルも各々違います。さらに僕の音の取り方や僕なりのスタイルというものもあるので、そういった千差万別のものをまとめていくのは大変な作業です。しかしそこが魅力にもつながっているとも言えます。主役についても、日本バレエ協会だから実現した貴重な組み合わせですよね。

篠原聖一さん

「白鳥の湖」を演出する面白さは、どういうところにあると思われますか?

自分なりの演出をやっていくにはどうすればいいのだろうと暗中模索しながらやっているところですが、やはり「白鳥」の根底にあるのは「真実の愛」や「死と再生」だと思います。今回はロットバルトが「悪」の象徴、白鳥は「真実」の象徴として描きました。王子とオデットがお互いに本当の愛を見つけて、悪を滅ぼすというストーリーには僕も惹かれます。ただ、その先のエンディングは振付する人によってさまざまで、大きく2つにわかれています。ひとつは王子とオデットは死んでしまいあの世で結ばれるというもので、これもひとつの「再生」といえます。もうひとつは、ふたりが悪を滅ぼした後、オデットは白鳥から人に戻って王子との人生を始めるというものです。今回のエンディングをどの方向に導くのか、それを決められる難しさと面白さを感じています。実際にどうなるのか、それは乞うご期待ということで(笑)。

このサイトをご覧になっている方々へ、メッセージをお願いします。

私が作品を作る際には、常に「どなたでもストーリーがわかるように」が前提にあります。今回の「白鳥の湖」も、ストーリーの流れや人の心の動きなどがよくわかる演出になっていますので、ぜひダンサーたちの素晴らしい踊りからそれらを感じていただければ幸いです。

オデット/オディール役 佐々部佳代さんインタビュー

佐々部佳代(ささべ かよ)

佐々部佳代さん
佐々部佳代さん

5歳よりバレエを始める。塚本洋子、松岡伶子に師事。ジャクソン国際バレエコンクールにて3位、東京新聞全国舞踊コンクールにて3位、こうべ全国洋舞コンクールにて1位受賞。2012年から2016年までKバレエカンパニー所属。くるみ割り人形、眠れる森の美女、白鳥の湖、シンデレラ、ドン・キホーテ、ラ・バヤデール、カルメンにて主役を踊る。同団を退団後はバレエネクストにてシンデレラ、ドン・キホーテに主演。Sba jrカンパニーにてくるみ割り人形に主演。日本バレエ協会にてパキータ主演。その他、ガラ公演等にゲスト出演して活躍中。

「白鳥の湖」のオデットは何度も演じられていらっしゃいますね。

はい。今回はオデットとオディールの二役ですから、気持ちはもちろん、動きも切り替えが必要です。たとえばピルエットひとつとっても、オデットは本当にゆっくりと形をはめ、顔をつけて回りますが、オディールはぱぱっと素早く顔をつけて回ります。アラベスクもオディールはぽんっと決める感じです。昔と違い、今はオディールのほうが踊りやすいと感じています。「白鳥の湖」はバレエを知らない人でも知っているほど有名な作品なので、そこはプレッシャーではありますね。「普通」に踊っていてはだめだと思いますし、体力的にも普通に踊っているともちません。その辺も調整が必要という、一筋縄ではいかない作品です。

今回の篠原さんの振付、演出っていうのは、佐々部さんにとってはどのように感じていらっしゃいますか?

わかりやすくシンプルで、素晴らしいです。こちらはいろいろ考えてしまいがちなのですが、マイムの指導をしていただく時も「シンプルでいい」と。余計なものがない心地よさがあります。

稽古風景

ダンサーとして日頃から気をつけていることなどはありますか?

まずは絶対にテクニックが落ちないようにするということですね。今はプロのカンパニーに所属していないので、自分に甘くしようとするとどんどん甘くなってしまいます。人の目がなくても自分を律し、技術は磨き続けなくてはいけません。体の管理も大切で、何を食べるかも栄養士さんにチェックしてもらうなど、勉強するようになりました。もっと若いときはその若さだけでやっていけるところがありましたが、今は練習の疲れが翌日に残ることも少なくないので、体の管理は今のほうがちゃんとしていると思います。

観客のみなさんへメッセージをお願いします。

久しぶりに東京文化会館で踊らせていただくことにとても喜びを感じているので、その思いを込めて踊りたいと思います。

ロットバルト役 高岸直樹さんインタビュー

高岸直樹(たかぎし なおき)

高岸直樹さん
高岸直樹さん

1986年チャイコフスキー記念東京バレエ団に入団以降、永らくプリンシパル・ダンサーとして活躍、同団のあらゆるレパートリーで主役を演じる。その活躍は国内のみに留まらず、モーリス・ベジャール・バレエ団、オーストラリア・バレエ団等への客演のほかベルリン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座、ロイヤル・オペラ・ハウス、ウィーン国立歌劇場、モスクワ・ボリショイ劇場など世界の名だたる舞台で主役を務める。2015年に同団を退団、特別団員となり、現在は自身の高岸直樹ダンスアトリエ等で後進の指導にもあたっている。

今回はロットバルト役での出演ですね。

ジークフリード王子もロットバルトも何度かやっていますが、ロットバルトのほうが踊っていて面白いと感じていました。王子の場合、自分自身もエレガントでいなくてはならず、貴族のような空気を醸し出さないといけません。一方、ロットバルトは野性味もあって、僕も素のままできる感じです。だからいつやっても楽しいですね。

篠原さんの演出のロットバルトはいかがですか?

まだ稽古を始めたばかりなのですが、第一印象は「踊らすな」でした(笑)。2幕で登場してから、ロットバルトが結構踊るんですよ。どう演じていくかという肉付けをしていくのはこれからですが、振りをいただいた今の時点ではよく動くという印象です。

「白鳥の湖」への抱負をお願いします。

ロットバルトは2年ぶりですが、篠原さんの演出・振付なので楽しみながらやっていきたいと思っています。練りがいのある役柄であり振りであるので、これからの稽古でどのようなロットバルトができあがるのか、私自身も楽しみです。また、ノーブルな役をたくさんやってきたせいか、いまだに私もノーブルだと思われがちで(笑)、悪役を見られたことのある方はあまり多くないかもしれません。今回はノーブルとは一味違ったキャラクターを演じますので、ぜひ観にいらしてください。

日本バレエ協会業務執行理事 本多実男さんインタビュー

本多実男(ほんだ じつお)

本多実男さん
本多実男さん

1973年、東京シティ・バレエ団入団、以後同団の総ての作品に出演。またイタリア褒章協会賞、エミー賞受賞作「月」に、NHKバレエの夕べ「春の祭典」に主演。1986年、文化庁派遣在外研修員としてカナダ・ナショナル・バレエ団、ロンドン・フェスティバル・バレエ団にて研修。1987年、現代舞踊協会新人賞受賞。1988年、東京シティ・バレエ団退団後は牧阿佐美バレエ団、スターダンサーズ・バレエ団、新国立劇場バレエ団等に客演。現在日本バレエ協会常務理事、劇団四季講師他。

今回の演目に「白鳥の湖」を選ばれた理由をお聞かせください。

この数年、海外から振付師を招いて公演していたのですが、日本人にも素晴らしい振付者がいるということをそろそろアピールしたいと思っていました。また、作品も日本初演などの珍しいものが続いていました。そこで誰もが知っているポピュラーな作品を日本人による演出・振付で公演したいということになり、篠原さんに「白鳥の湖」をお願いしました。

色々な劇団からダンサーが集まりひとつの作品を作り上げていく、その意義は何でしょう?

バレエ団や研究所が全幕を公演するのは費用面でもなかなか厳しいのですが、協会が代わりに行うことで、ダンサーたちに舞台に立つ機会を提供できます。フリーでもバレエ団に所属していても、多くのダンサーは仕事をしながらレッスンに通い、身体を維持しつつ、表現できる場を探していますから、その点からも、協会が主催する公演には意義があると思っています。特に日本のダンサーのレベルはどんどん上がっていて、僕が踊っていた時代に比べたら体型も技術もはるかによくなりました。そういうダンサーたちに、ぜひ話題性を持って踊っていただきたいですね。

稽古風景

今回の「白鳥の湖」の見どころはどんなところでしょう。

ダンサーと篠原さんの演出です。ダンサーの所属はさまざまですから、普段はありえないような組み合わせのオデットとジークフリードが見られます。これは必見ですよ。また、普段はソリストとして活躍しているような人がパ・ド・トロワや小さな白鳥、大きな白鳥などでも登場しますので、ぜひキャストにご注目ください。そして何と言っても篠原さんがどんな演出で「白鳥」を見せてくれるのか、そこを大いに楽しみにしていただきたいと思います。

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