劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』 稽古場訪問&インタビュー|2019都民芸術フェスティバル 公式サイト

読み上げブラウザ用メニュー

  1. Home
  2. 特集
  3. 劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』 稽古場訪問&インタビュー

2019都民芸術フェスティバル 公式サイト

劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』
稽古場訪問&インタビュー

松本 祐子(まつもと ゆうこ)

松本 祐子さん
松本 祐子さん

『からまる法則』に続き銅鑼2本目、文学座所属。1999年文化庁在外研修員としてロンドンに研修。帰国後、一作目の『ペンテコスト』はその上演に対して2002年第9回湯浅芳子賞を受賞。2006年には『ぬけがら』(文学座アトリエの会)『ピーターパン』(ホリプロ)の演出に対して、第47回毎日芸術賞―千田是也賞を受賞など幅広く活躍。ここ近年の演出作品は『罠』(俳優座劇場プロデュース)『夢たち』(劇団文化座)『琉球の風』『屋根裏の仏さま』(劇団東演)今後の予定として『喝采』(加藤健一事務所)『ヒトハミナヒトナミノ』(マッチポイント)『スリー・ウィンターズ』『一銭陶貨~七億分の一の奇跡~』(文学座)

佐藤 文雄(さとう ふみお)

佐藤 文雄さん
佐藤 文雄さん

俳優・劇団銅鑼代表。代表作として『センポ・スギハァラ』杉原千畝役で国内外で800ステージ以上演じるほか『池袋モンパルナス』小熊秀雄役など。また、2005年以降、若者無業者の就労支援プロジェクトの一環として若者演劇ワークショップの講師を務めるほか、中小企業家劇団チームKITAYAMAの演出を務めるなど、幅広く活躍。今後の出演作品として8月公演『ENDLESS―挑戦!』(東京芸術劇場シアターウエスト)。

宮田 将英(みやた まさひで)

宮田 将英さん
宮田 将英さん

俳優。文学座附属演劇研究所を経て、2018年銅鑼入団。同年『池袋モンパルナス』松本竣介役に抜擢。今回銅鑼二本目の舞台となる。身長182cmの長身を生かした演技は観る者を引きつける。探究心があり将来を有望されている若手俳優の一人。

劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』

公演情報はコチラ

『花火鳴らそか ひらひら振ろか』はどのようなお話でしょうか。また、お二人の演じられる役どころを教えてください。

佐藤 長崎のお盆は、お墓の前で花火を打ち上げたり爆竹を鳴らしたりと派手にご先祖様を迎え送るのですが、それをひとつのモチーフにした話です。10年前に妻を亡くしてからは愛犬シロと一緒に暮らしていた奥平(おくだいら)という老人が、シロと大学時代の親友の死をきっかけに認知症になります。その親友が長崎出身だったので、奥平は「何かしないと」と考え花火を上げるのですが、それが原因でボヤを出してしまうというところから芝居が始まります。あの世とこの世の人が行き来する不思議な物語で、僕は奥平を演じます。

宮田 僕の役柄はヒノキの精霊です。これは主人公の平原なつが大事にしている、おじいさんの形見であるヒノキの盆栽に宿っています。奥平家で暮らすなつを精霊として見守っているのですが、精霊を見える人と見えない人がいて、見える人とは会話もできます。

稽古風景1

役作りの苦労とやりがいはどんな点でしょう。

宮田 今までの役はほとんどが自分の実年齢と似た役柄でしたが、今回は精霊だけに(笑)、もっと年上で想定しないといけません。自分が経験したことのないことをイメージするのは苦労しますが、そこが楽しさにもつながっています。

佐藤 奥平は、体は80歳で心は23歳、しかも認知症という設定です。一目ぼれするシーンなども出てくるので、自分の青春時代を思い起こしながら演じようとするのですが、何十年も前のことですから新鮮な気持ちになるのがなかなか難しくて(笑)。稽古を重ねていくうちに獲得できると思います。役作りのために、長崎のお盆のドキュメンタリー番組は何度か繰り返してみました。僕は青森県の弘前出身なので、自分の知っているお盆の過ごし方との違いに最初は驚きましたね。けれどああやってにぎやかに迎えて送るということが、生きている人にとって儀式なのだととらえると面白く感じました。

稽古風景1

松本さんは物語の構想・概要を聞かれたとき、どのような感想を持たれましたか?

松本 お盆や法事といった行事は、私の親くらいの世代は真摯に受け止めてやっていたように思うのですが、私くらいから下の世代になると、その必然性が薄れてきているように感じていました。今回、長崎のお盆がテーマだと聞いたとき、死者を思い出すとかご先祖様と会話するというのがどういうことかを、今一度考えさせられる機会になるのではと、興味深く思いました。私事ですが昨年、認知症だった父が他界しました。父の頭の中で何が起きているのかを知りたかったし、わかってあげたかったのですが、現実としてそれは難しいことでした。今回は認知症をかなりコメディタッチに描いているし、「こんなにわかりやすい認知症の人はいない」というくらい奥平がたくさんしゃべってくれるので(笑)、個人的にも「わかってあげたかった」という気持ちがこの芝居で消化されているような気がして、この作品に出会えたことに感謝しています。
長崎のお盆は、人との別れをにぎやかなお盆という形である種の祝祭にして、その人たちがあったからこそ私達が生きているということを一緒にことほぐことができる、素晴らしい風習だと思います。ご先祖様や先に旅立った人のことを思い出し、人間関係をつないでいくことで生がつながれていくということを感じていただけるように作りたいと思っています。

この作品のテーマは何でしょう。

松本 生かされていることのありがたさや、人と伝達しあうことの喜びです。奥平はすごく欲張りの役で、認知症になってなお死者を呼び出し、死者とも生きている者とも会話し、自分の欲求を遂行しようとします。一方、平原なつは人と伝達しあうことが怖くなっています。今の若い世代も、どちらかというと他者と関わるのを敬遠しがちなところがありますよね。そういう人に対して、80歳の老人が認知症になってもなお持っている「人と伝わり合いたい」という欲望が何らかのエネルギーを与えて、「人と伝わり合うのもいいんじゃないか」と感じてもらえるような作品にしたいと考えています。

劇団銅鑼の魅力はどんなところだと思われますか。

松本 とても誠実な劇団だと思います。真面目で正直な人が多いので、技術でごまかすことがないのも素晴らしいところですね。あとはかなり書き下ろし、新作にこだわってやってらっしゃるので、無難に逃げずチャレンジしていらっしゃるなと思います。作品の選定の仕方や出会うテーマも多岐にわたっていらっしゃいますが、全般的に言うと弱者に目を向けることに非常にこだわっている劇団じゃないかと思います。だから今回、お金持ちのご主人という奥平の設定に、佐藤さんは苦労されています(笑)。

稽古風景2

宮田 入団する前から、劇団銅鑼の作品は見る人にすごく影響を与えると感じていました。松本さんが演出された『からまる法則』ではホームレスの支援団体の人たち、『チャージ』という作品では清掃会社で働いている人を通じて「こういう人もいるのか、こういうこともあるのか」と教えてくれました。学校公演も行い、小学生や中高生の心を動かす作品を生み出している劇団でもある点にも魅力を感じています。

この劇団ならではの特色はどういったところでしょう。

佐藤 うちの理念かつ特色は、弱者や無名の人たちに目を向けた芝居、しかもオリジナルの作品を作るということです。たとえば、今ではすっかり有名になりましたが、ユダヤ人6000人にビザを発行した杉原千畝さんという外交官の存在を知ってぜひ芝居にしたいと思い、1992年に上演した当時は、彼はまだ日本でほとんどと言っていいほど知られていませんでした。「人々の暮らしに演劇が溶け込み、心豊かな人生の糧となること」という願いを込めて作品を作っています。組織としては民主的な運営で、一人ひとりが自分で考え、自分の言葉で発言する、時間はかかるけれどみんなの知恵や意見を出し合いながら一歩一歩やっていこうという劇団です。

本番に向けて稽古は順調に進んでいますか?

松本 演劇の稽古場って、最後の2週間で急激に成長するんですよ。だから今の段階ではまだこれからといったところですね。舞台芸術は、今回はシンプルなセットになっています。本来はもっと具象で飾ることが予想されて書かれた戯曲だろうとは思ったんですが、この世とあの世の境界線を表現するに、「この世なのかあの世なのか、曖昧としているけれど凛とした空間」といったイメージがあったので、あえてシンプルにしました。音楽については、普段はほとんど自分で選曲するのですが、今回は音響さんに一任したので、どんなものが出てくるか楽しみです。

都民芸術フェスティバルのウェブサイトをご覧のみなさまへメッセージをお願いします。

『花火鳴らそか ひらひら振ろか』
PDF(552KB)

佐藤 僕は認知症で体は80歳だけど心は23歳という役どころです。そういう老人とそうでない人とのすれ違いや噛み合わないやりとりの面白さ、さらにあの世から来た人を生きている人が見える・見えないを含めた三つ巴のやりとりが非常にコミカルな芝居ですので、そこを楽しんでいただければと思います。

宮田 人を思いやったり、人と関わったりすることのあたたかさがすごく詰まった作品です。僕も含め若い世代は人と関わることを面倒だなと思うこともあるのですが、この作品に取り組んでいると「人と関わるのは楽しいな」と思うので、見ている人にも同じ思いを感じていただきたいです。そしてひとりでも多くの人、特に僕としては同世代の人に「色々な人と関わるのは面白そうだ」と思ってもらえたらうれしいです。

松本 見ていただいた人が、必ず懐かしい人を思い出せるような作品にしたいと思います。そしてその人たちのおかげで自分が今ここにいるんだということを喜びに、ちょっとほっこりできるような作品にもしたいです。会話が楽しいお芝居なので、小さい子から年配の方まで楽しんでいただけます。みなさんで見て、ご先祖様や亡くなったお友だちの話などを楽しくしていただければと思いますので、ぜひ見にいらしてください。

佐藤 お盆は大事なかけがえのない人を迎え、そしてまた送るという儀式でもあります。長崎のお盆がモチーフとなっているこの作品をご覧になっていただくことで、過去のさまざまな人との出会いや別れを思い出して何か感じていただければと思います。それが、これから生きていく自分自身へのメッセージになれば幸いです。会場でお待ちしています!

ページの内容終わり

このページの関連メニュー


TOP