劇団青年座第240回公演『からゆきさん』 インタビュー|2020都民芸術フェスティバル 公式サイト

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劇団青年座第240回公演『からゆきさん』 インタビュー

綱島 郷太郎(つなしま ごうたろう)


綱島 郷太郎さん

1997年劇団青年座入団。東京都出身。2003年オーストラリアの映画「Japanese story」で初主演を果たす。また吹き替えでは海外ドラマ「HAWAII FIVE-O」のアレックス・オローリンの声を担当。舞台だけでなく映画やドラマ、吹き替えなど幅広く活躍。最近の主な舞台作品として、『砂の女』(劇団ブルーライオンアンブレラ)、『砂塵のニケ』(青年座)、『をんな善哉』(青年座)などがある。

安藤 瞳(あんどう ひとみ)


安藤 瞳さん

2007年劇団青年座入団。神奈川県出身。入団以降、舞台だけでなく映画やドラマ、吹替えなど幅広く活躍。映画「アリス・イン・ワンダーランド」でアリスの声を務める。また新劇5劇団の同世代女優7人による演劇ユニットOn7の一員としても活動している。最近の主な舞台作品として『DNA』(青年座)、『CHIMERICA チャイメリカ』(世田谷パブリックシアター)、『その頬、熱線に焼かれ』(On7)などがある。

劇団青年座第240回公演『からゆきさん』

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『からゆきさん』とはどのような作品なのでしょうか。

チラシ
PDF(392KB)

綱島 日露戦争前夜、戦争という大きな渦の中に巻き込まれていく人間たちのドラマが散りばめられた物語です。時代に翻弄された人々が右往左往している様が描かれている2時間50分の大作です。初演の1977年から何度も公演を重ね、今では劇団の財産演目となっています。『からゆきさん』がこれほど長く支持していただいているのは、国と個人の関係性はいつの時代も変わらないので、そこを面白いと感じていただけているからかもしれません。

安藤 弱者がメインだということも大きいと思います。からゆきさんはたくましく生きていく女性ですが、国家の事情に振り回される立場であることには違いありません。そこが丁寧に描かれているからこそ、共感を得ていただけるのではないかと思います。

綱島さんは巻多賀次郎役を、安藤さんは紋役を2015年から演じられ、今回が4度目となります。それぞれの役を初めて演じることが決まったときは、どんなお気持ちでしたか?

安藤 私はまだ入団して10年経っていませんでしたし、紋役は青年座創立メンバーの東恵美子さん、次に高畑淳子さんというそうそうたる方が演じられてきたので、まさか自分が紋役をいただけるとは思ってもいませんでした。だから最初に聞いたときは「へっ?」と声が裏返りました(笑)。けれどここが劇団のいいところだと思うんですが、西田敏行さんと高畑さんが演じられた作品に関わったり実際に見たりされた先輩が、受け継いできたものをちゃんと後輩の私たちに伝えてくださるので、ひとりでやっているという孤独感がありません。プレッシャーは今もありますが、郷太郎さんと一緒にそれを背負いつつ、立ち向かっていこうという思いでいます。

綱島 多賀次郎役が決まったとき、何人かの先輩は「俺がやりたかったのに」と、しばらく口をきいてくれませんでした(笑)。70代の大先輩も「あれ、俺やりたかった」というほど、多賀次郎役を熱望する座員は多いんです。さすがに4度目となると、みんな応援してくれますね。

安藤 今の郷太郎さんを見ながら「10年後の多賀次郎は俺が!」って思っている後輩はたくさんいると思いますよ。『からゆきさん』の大ファンはすごく多くて、みんな作品に対する「これ」という熱い思いを持っているんです。そういう作品に何度も関われるのはとてもありがたく、幸せなことです。

おふたりのキャストで4度目、ほかのキャストもほとんど前回と同じとなると、演じやすくなるということもあるのでしょうか。

綱島 前回の公演が2017年ですから、2年ブランクがありました。その間にお互い別々のキャリアを重ねているわけですが、違う作品をやっているとき「あ、あの部分は瞳ともうちょっと話し合ってこうしたらどうかな」と唐突に思いついたり、映画を見ているときに「このシーン使えないかな」と考えたりします。これは僕に限らず、座組全員が同じです。そうやって各自が成長しているので、クオリティとしては公演を重ねるごとに上がっていると思います。

安藤 私の場合、初めて台本を読んだときは「紋さんって強くて凛とした女性だ」という印象を受けました。そのため、初演のときは「自分の人間力で埋まらない部分は演技でどうにか大きく見せなければ」と思っていました。それが公演を重ねていくうちに、強さというのは頑なさや硬質なものだけではなく、むしろ柔軟さや包容力から出てくるものなのではと、意識が変わりました。

綱島 演出は2015年から今回までほとんど変わっていないと思います。むしろこちらがどんどん濃くなって演出を超えたところにまで突き進んでしまっているので、それを伊藤さんが整理してくれている感じです。

綱島郷太郎さん、安藤瞳さん

伊藤大さんの演出の魅力はどういうところだと思われますか?

安藤 いい意味で自由なところですね。役者が持ってきたものを否定から入らず、足し算していく演出家なので、私たちがよければそれがどんどんプラスに転じます。だからこそ怖い演出家でもありますね。私たちの役作りが薄ければそれまでですから。私は伊藤さんの演出が多いんですけど、毎回、よくも悪くも自由なので役者の技量がものすごく試されて、そのまま晒されるという怖さがあります。

綱島 僕は、伊藤さん演出の作品は2本目になります。伊藤さんは海外戯曲を演出されることが多いんですけど、意外なことに歌舞伎がお好きらしく、よく見ていらっしゃるんですよ。最後の多賀次郎が捨てられるシーンでは「雁治郎さんのあれ見た? 最後のシーンがすごく似てるからちょっと見てみてくれる?」など、歌舞伎からのアドバイスがあったりするのが面白いですね。

『からゆきさん』は宮本研さんの書下ろしですが、どんな点に魅力を感じられますか?

綱島 『からゆきさん』は宮本さんが青年座に書き下ろした作品で、初演の方たちに宛書きで書いてらっしゃるんですよね。初演の中台祥浩さんのパーソナリティをそのまま多賀次郎にして書いているので、宮本さんの作品の中でも少し異色な作品だと思います。また、ちょっと面白がって書いてるなってところがいっぱいあるんです。ちゃんとフリがあってオチがあってというのも散りばめられているんですよ。そういうところが楽しいですし、魅力だと感じます。

安藤 戯曲自体が力強くて、言葉がものすごくパワーに満ちあふれているので、そんな言葉を舞台で発することができるのは役者冥利に尽きます。また、日本語の美しい作品でもあり、セリフをしゃべるごとに「なんて美しいんだろう」と思うことがたくさんあります。それから、セリフがものすごく覚えやすいんです。言葉の流れがきれいだからでしょうね。セリフ覚えの段になって、本当によくできている台本としみじみ思いました。「宮本さんのセリフはスッと入ってくる」っておっしゃる俳優さん、多分たくさんいると思います。

おふたりにとって劇団青年座はどのような存在でしょう。

綱島 家族のようなものと言葉にするのは簡単ですが、その一言だけでも表現できないものがありますね。強い思い入れを抱いて入ったわけではなかったので、最初はいつ辞めてもいいという生意気な気持ちでいました。それが尊敬できる先輩方と出会い、ぜひこの人たちと一度は絡んで芝居をやりたいと思うようになっていきました。実現しても「またやりたい」と思うので、終わりがないですね。その上に素敵な後輩もたくさんできて、後輩たちとも一緒にやりたいと思うようになり、気がつけば在籍22年です。西田さんは本当に後輩の面倒見がいい方で、在籍されていた頃には僕もすごくよくしていただきました。だから僕も後輩たちに同じことを返していきたいと思うので、ますます辞められないですね。

綱島郷太郎さん

安藤 最初の1年は稽古場付きをかならずすることになっていて、その年に上演される芝居すべてに付くんです。そのとき、「こんなに素敵な先輩方がいるんだ」と驚きました。だから私も「この人と一緒にやりたい」と思える先輩の存在はすごく大きいですし、郷太郎さんがおっしゃったように、後輩も魅力的な子たちがたくさんいます。一緒に舞台に立ちたいと思える役者さんがいる現場ってすごいことだと思うし、そういうところに所属できていることに喜びを感じます。青年座の俳優は、演じるとものすごくかっこよくなるんですよ。そんな七不思議みたいなことも体験しています(笑)。

観劇経験の少ない人が『からゆきさん』を楽しむコツなどがあれば教えてください。

綱島 時代背景を知った上で見ても面白いと思いますし、まったく知らない方が見ても楽しめる作品だと思います。この作品はどちらもありだと思いますね。

安藤 美しい日本語もそうですが、衣装にも注目してみてください。明治の着物も出てきますし、かつらも役によって異なり、当然かんざしなども違ってきます。そういう細かい部分も見ていただくと、より楽しんでいただけると思います。

都民芸術フェスティバル公式サイトをご覧の皆さまにメッセージをお願いいたします。

綱島 2020年1月16日から19日、本多劇場で上演される『からゆきさん』に出演します。この作品はとても楽しく面白いので、ぜひ劇場に足をお運びください。よろしくお願いします。

安藤 『からゆきさん』はものすごくスケールの大きな作品で、総勢22名の役者が最後カーテンコールで並ぶときは圧巻です。こんな大型な作品はなかなかないので、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。お待ちしております。

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