牧阿佐美バレヱ団
テリー・ウエストモーランド演出・振付(原振付:マリウス・プティパ)『眠れる森の美女』
インタビュー
牧阿佐美バレヱ団 芸術監督 三谷 恭三さん

三谷恭三(みたにきょうぞう)

6歳からバレエを始め、1968年に谷桃子バレエ団に入団。1976年、ヴァルナ国際バレエコンクールに、牧阿佐美バレヱ団に所属していた清水洋子とともに出場し、最優秀カップル賞を受賞。 同年、文化庁の芸術家在外研修員に選抜され、1年間モナコで研鑽を積む。
1979年、帰国後に牧阿佐美バレヱ団に入団。1994年、同バレヱ団の総監督に就任。ローラン・プティなどの現代バレエ作品をレパートリーに加えた。また、自らがプロデュースする「ダンス・ヴァンテアン」公演で若手ダンサーを登用するなど後進の育成に努めるかたわら、内外のバレエコンクールの審査員を歴任している。第36回芸術選奨新人賞舞踊部門(1986年)受賞

  

牧阿佐美バレヱ団の概要を教えてください。

三谷恭三さん

1956年にバレリーナの牧阿佐美が、母親で橘バレヱ学校初代校長の橘秋子とともに設立しました。以来60年近くにわたり、あくまでもクラシック・バレエをベースにしつつも、ヨーロッパ各国の振付家の感性を取り込みながら、時代に応じたステージを展開してきました。クラシックをベースにすることで、モダンバレエの要素も自在に取り込めるのですが、逆にモダンがベースだとクラシックはできません。基本をクラシックにおくこと、そこが当バレヱ団が長く活動を続け、発展してきたことのひとつの理由であると受け止めています。2014年6月には、スペインのグラナダ国際音楽舞踊祭に招聘され、その舞台は国際的にも高くご評価いただきました。
このたびの都民芸術フェスティバルで上演する『眠れる森の美女』では、主役のオーロラ姫を当バレヱ団の伊藤友季子、青山季可が務めます。
当バレヱ団の団員は男女合わせて100人ほどで、年齢幅は18歳から60代までと幅広いです。シニア男性のダンサーは、王様の役などをこなします。動きのスピードやキレはさすがに若いダンサーにはかないませんが、舞台に厚みを出すためにも、風格の必要な役柄には不可欠の存在です。
また、当バレヱ団には橘バレヱ学校が系列校としてあり、新人の育成・登用にも力を入れています。

バレエの魅力はどういったところにあるとお考えですか?

バレエは様々な要素の総合芸術です。まず、音楽です。『くるみ割り人形』『白鳥の湖』そして今回の『眠れる森の美女』というチャイコフスキーの三大作品の曲は、テレビコマーシャルなどでもよく使われており、どなたにも馴染みのあるものでしょう。この名曲を、オーケストラによる生の演奏で楽しめます。次に、舞台美術です。クラシック・バレエでは、時代考証を踏まえ、往時のままに再現された舞台を見ることができます。また、バレエダンサーたちが着る衣裳の美しさにも目を奪われると思います。さらに、照明も重要な要素です。そして、こうした舞台の上で踊るダンサーたちの身体と動き。"動く彫刻"とも呼ばれるその美しさが堪能できると思います。
日本におけるバレエは、森下洋子さんや草刈民代さん、熊川哲也さんといったダンサーがスターダムに上がり、テレビなどでよく見かけるようになって、とてもメジャーな存在になりました。また、昔から少女たちの憧れの的で、現在もバレエ人口は増えていると思います。

『眠れる森の美女』はどういった作品なのでしょうか? 見どころもお教えください。

1890年にロシア帝室バレエ団が本作品を初演した際、マリウス・プティパという振付師が手がけてクラシック・バレエを確立したとされる演出が、現代における本作品の原典となっています。当バレヱ団がレパートリーとしている『眠れる森の美女』はイギリスの名振付師であるテリー・ウエストモーランドがその原典版を忠実に継承した正統派の舞台となります。
『眠れる森の美女』は全編約3時間の大作で、バレエ作品の中でも登場人物が最も多く、美術や衣裳がきらびやかで絢爛豪華な舞台です。まさに、バレエの持つ華やかさ、美しさが凝縮された作品です。あまり難しいことは考えず、「あのダンサーはきれい」「この衣裳は素敵」といったように、気負うことなくステージ全体を思う存分楽しんでいただければ、と思います。