日本オペラ協会公演 粟國淳さん 砂川涼子さんにインタビュー

日本オペラ協会公演 「キジムナー時を翔ける」<新制作> オペラ全2幕(日本語上演)

現代の沖縄を舞台に、過去と未来を訪れるファンタジックオペラ。

ガジュマルの樹に宿る妖精「キジムナー」とともにタイムトラベルし、
「人と自然のあり方」「伝統の尊さ」を現代人に優しく問いかける傑作オペラを新演出で上演。
演出の粟國淳さんとキジムナー“カルカリナ”役の砂川涼子さんにお話をうかがいました。 日本オペラ協会公演 「キジムナー時を翔ける」<新制作> オペラ全2幕(日本語上演)公演情報はこちら


砂川 涼子さん(左)
粟國 淳さん(右)

粟國 淳(あぐにじゅん)

演出家。新国立劇場オペラ研修所演出主任講師、日生劇場芸術参与、大阪音楽大学客員教授。東京都出身。父はオペラ演出家の粟國安彦。ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院でヴァイオリンと指揮法を学ぶ。オペラの演技・演出法をM.ゴヴォーニに師事。1998年より1年間、文化庁派遣芸術家在外研修員として研鑽を積む。1997年藤原歌劇団の「愛の妙薬」で演出家デビュー。第23回エクソンモービル音楽賞奨励賞受賞。

砂川 涼子(すなかわりょうこ)

声楽家(ソプラノ)。藤原歌劇団団員、武蔵野音楽大学非常勤講師。沖縄県出身。武蔵野音楽大学卒、同大学大学院修了。2001~04年に第10回(財)江副育英会オペラ奨学生として、2005~06年に五島記念文化財団奨学生として渡伊。第34回日伊声楽コンコルソ優勝。第69回日本音楽コンクール第1位。2006年第12回リッカルド・ザンドナイ国際声楽コンクールでザンドナイ賞受賞。第16回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。

シンプルで分かりやすく、ユーモアも交えた作品。
──『キジムナー時を翔ける』はどのような作品ですか。

砂川 私は沖縄出身ですが、「キジムナー」は沖縄の人でしたら誰でも知っています。「ガジュマルの樹に宿る妖精」というか、純粋な心を持った子ども、あるいは精霊や座敷童みたいなものですね(笑)。身近な存在のキジムナーがオペラの主人公に取り上げられるのは、不思議なようなうれしいような感じがします。

『キジムナー時を翔ける』は自然破壊などの問題も扱いつつ、ユーモアを交えたファンタジーな感じがあって、オペラらしいといいますか、中村透先生ならではの作品だと思います。楽しいシーンもたくさん出てきますよ。

粟國 あくまでも私の解釈ですが、この作品の一番のテーマは「人間と、自然および地球との関係」だと思います。キジムナーは自然もしくは地球そのものであって、仲良くなればいろいろな恵みを与えてくれるし、逆にこちらが裏切るようなことをすると大変に怒り、命まで奪われかねない。人間が自然のありがたみを自覚し、もう少し謙虚になってもいいのではないか、ということですね。

とはいえ、観念的とか哲学的といった面はまったくなく、シンプルで分かりやすいストーリーです。そのベースには、例えば沖縄の歴史や沖縄が抱える問題などに対する、作者である中村先生の思いが込められているように感じました。『キジムナー時を翔ける』はとても親しみやすく、かつ奥の深い作品といえるのではないでしょうか。

客観的かつ重層的に沖縄を見ることができるのではないか。
──粟國さんも沖縄にご縁があるそうですね。

粟國 私の父が沖縄出身ですが、私自身は沖縄に住んだことがなく、イタリアで育ちました。ですから、私の中には沖縄に対する複雑で微妙なイメージがあるので、それが正しいかどうかと葛藤する中で、改めて沖縄を見つめ直しながら創作活動をしているところです。

作者の中村先生は北海道出身ですが、若い頃に沖縄に移住なさったほど、沖縄を愛したかたです。また、演出をする私自身も沖縄につながりがあるものの、イタリアの文化の中で大人になりました。小さい頃に、イタリアのテレビのニュースで沖縄返還を知った父が泣いて喜んでいた姿を覚えています。「淳にもふるさとがある。それは日本という国であり、沖縄であり、私が生まれた南大東島だよ」と言われたこともあります。

中村先生と私に共通するのは、沖縄に縁があり、沖縄を愛しつつも、沖縄の人間ではないからこそ一歩下がって客観的かつ重層的に沖縄を見ることができるのではないかという点です。いまは、とてもスペシャルな気持ちでリハーサルに取り組んでいるところです。

キジムナーという「神」のような存在を、どう演出するか。
──演出をする上で、どのようなことをお考えになっていますか。

粟國 今回、主役のカルカリナはダブルキャストで、同じ役を女性と男性、砂川さんと中鉢聡さんが演じます。それぞれに異なるカルカリナというエンティティ(存在)を、一つの作品の中で描くことができるというのは、とても面白いと思います。

キジムナーという、いわば「神」のような存在をどう表現するか。例えばギリシャ神話の神々は、けっこうみんな人間くさいですよね。嫉妬したり、いたずらをして喜んだり。それは、「神」というとてつもなく大きい力を、自分たちが理解できるような形で描いているのだと思います。「自然」という「神」を、われわれはそれぞれ異なるやり方で理解していいわけだし、今回のキジムナーも、その伝統的な姿にとらわれず、それぞれの感じ方に応じて理解していいのではないか。絶対にこうあるべき、というものではないということもテーマの一つであり、興味深い点ですね。

日本語だから、ダイレクトにお客様に届く。
──役作りの面では、いかがですか。

砂川 キジムナーは人間だけれど神のような存在でもあり、その役を楽しくかわいらしく演じる部分と、しっかり歌ってドラマチックに表現する部分などが短い間にたくさん出てくるので、そこが非常に難しいですね。

オペラはヨーロッパの作品が多いので、必然的に外国語で歌いますが、今回は日本のオリジナル作品なので日本語です。いつもと違って、日本語ならではの歌唱の難しさはありますが、言葉がダイレクトにお客様に届くという意味ではとてもいいですね。ストーリーを理解しやすいので、あまりオペラの舞台を観たことがないかたでも自然に楽しむことができるのではないでしょうか。

──見どころを教えてください。

砂川 セリフもけっこう多いので、お芝居に近いオペラという感じで見ていただけると思います。私の出番で一番印象的なシーンは、とても怒ってキジムナーに変身するところでしょうか。かわいらしいカルカリナと、怒ると怖いキジムナーのギャップがすごいので、ここはぜひ見ていただきたいところです。

私自身も、これまでははかなげな女性の役が多かったのですが、今回は声を荒げたり叫んだりとけっこう激しい場面もあるので、新境地に挑んでいる気持ちです。

粟國 オペラではあるもののセリフも多いし、ストーリーも分かりやすいので、子どもから大人まで、ご年配のかたまで楽しめる作品になっていると思います。

歌の世界に導かれてここまで歩んできた。
──砂川さんが声楽の道に進んだきっかけは何でしたか。

砂川 小さい頃から音楽に囲まれて育ち、ピアノを習ったり、歌ったり、中学では吹奏楽部でコントラバスでした。将来は音楽の教師になろうと思い、音楽の中でも一番好きだった「歌」を選びました。オペラ歌手という道はまったく考えておらず、ただ歌がうまくなりたい一心でしたが、コンクールで受賞したり、劇場で歌うチャンスをいただいたりと、自分の意思というよりも、歌の世界に導かれるようにしてここまで歩んできたという感じです。

自分の歌に対する課題は常にあるので、それをクリアしていく大変さはありますが、歌うこと自体をつらいと感じたことは一度もありません。公演の準備がうまくいかずに悩んでも、舞台に立った瞬間に気持ちを切り替えたところ、思ったよりもいい声が出たということもありました。舞台という空間で歌う喜びがあるから、たぶんこれからもずっと続けていくと思います。

オペラが初めてのかたでも楽しんでいただける作品。
──お客様へのメッセージをお願いします。

粟國 この作品は「人間と自然」や「沖縄」といったことをテーマとしており、オペラを初めてご覧になるかたにも、皆さんに楽しんでいただけると思いますので、ぜひおいでください。お待ちしております。

砂川 笑いあり、涙あり、感動ありの素晴らしい作品となっておりますので、ぜひ会場へ足をお運びください。

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