脚色・演出 こんにち博士さん、出演者 ユガミノーマルさん、端栞里さんにインタビュー
南極 第7回本公演「wowの熱」脚色・演出 こんにち博士さん、出演者 ユガミノーマルさん、端栞里さんにインタビュー
南極 第7回本公演「wowの熱」劇団員全員が本人役で出演し、かつ劇中劇も進む「熱」の渦巻く超演劇。客席に躍動感や高揚感、そして驚きを届けてくれるこの作品と劇団について、出演者のみなさんにお聞きしました。
こんにち博士
1996年生まれ、大阪府出身。大学在学中に演劇部(関西大学演劇研究部・学園座)に入り、出演や脚本演出などを経験。南極劇団化以降、ほぼすべての作品の脚本と演出、クリエイティブディレクションなどを担当。俳優としての出演や、フライヤー/マガジンのデザイン、衣装なども担当している。
ユガミノーマル
1997年生まれ、岡山県出身。関西大学に入学し、そこで演劇部(関西大学演劇研究部・学園座)での活動を通して現在の南極メンバーと出会う。2020年に南極を結成。同年に劇団「悪い芝居」にも俳優として所属。坊主頭と良く動く表情筋が特徴の俳優。南極のキャプテン。
端 栞里(はた しおり)
2002年生まれ、兵庫県出身。中学時代はダンス部、高校時代はバレーボール部に所属。高校2年生の時に初めて小劇場演劇を観て興味を持ち、演劇の世界に足を踏み入れる。王子小劇場の年間アワード佐藤佐吉賞2022にて最優秀助演俳優賞受賞。CoRich舞台芸術まつり!2024春にて演技賞受賞。
──「wowの熱」はどんなお話なのでしょう。どのような発想から生まれたのかも併せてお聞かせください。
こんにち:まず「wowの熱」という劇中劇が登場します。wow(ワオ)という14歳の少年は生まれたときから平熱が異常に高いという体質を持っていて、その力が覚醒し、中学校のプールの水をお湯にしてしまいます。それがきっかけで学校が熱狂の渦に巻き込まれていくというお話です。そこに、wowを演じている南極の端栞里自身の体温も上がっていってしまい、平熱を取り戻せるのかというストーリーも絡んだ作品となっています。
──見どころや楽しみ方を教えてください。
こんにち:端だけでなく、南極の劇団員10名全員がそのまま本人役として登場し、それぞれちょっと大変なことに巻き込まれていきます。本人が本人をどう演じるかは見どころのひとつだと思っています。
ユガミ:自分を演じるというのは、最初はどうしてもぎこちなくなってしまいました。そこを、こんにち博士が書いてくれた脚本から「なるほど、自分はこうなんだ」と発見しながら演じてみている感じです。
端:今は普段通りの「ノーマルな端栞里」なんですが、これをそのまま舞台でやるわけにもいかないわけで……。いつものように「役をもらってその役作りをする」というのとは、やはり違いますね。「端栞里」の役作りをするのは趣旨と違うのかなと、いろいろ試行錯誤中です。抽象的ですが、「一段上げる」というイメージがいちばん近いかもしれません。
こんにち:さほど難しいことではないかなと思っていたのですが、僕自身もやってみたら「難しいな」と気づきました(笑)。結構みんな苦戦している感じですね。
──wowはどんな役でしょう。また、主役の重圧はありますか?
端:wowは荒れている中学校で、いちばんイケイケの人気集団ではなく小さなグループの中でリーダーをやっている不良少年です。それがとっても愛らしいキャラで、大学生くらいならさぞやもてそうなのですが、いかんせん中学生なので、まだちんちくりんなのです。そこがまたかわいいいのですが、そういう役をちんちくりんの女の子が演じるというのも面白いと思います。
主役をやらせてもらうのは「(あたらしい)ジュラシックパーク」に次いで2回目です。前作では、本番に入ると「自分の調子が悪いとお客さんの反応に響くのでは」、「今日のお客さんの感想や反応をちゃんと組み込んで明日もやらなくちゃ」と、プレッシャーとまではいかなくても、いつもと違う感じはありました。主人公が真ん中にどんといるような作品だったせいもあると思います。今回はまだ稽古中なのでプレッシャーもまったく感じていませんし、「みんなで積み上げていこう、全員で、全力でやっていこう」という思いが強いですね。
──この作品で楽しみにしていらっしゃることを教えてください。
ユガミ:南極は毎回「見たことない演劇」を大事にしていて、そこを目指して作っているところがあります。どの作品でもかなり挑戦しているので、今回も客席のみなさんには「見たことない感じ」を味わっていただけると思っています。ただ、それがうけるかどうかは上演してみないとわからないので、お客さんの初日の反応は、どきどきすると共に一番楽しみにしているところではありますね。
──南極結成のご紹介をお願いします。
ユガミ:南極は2020年4月に旗揚げしました。僕とこんにち博士は同じ演劇部の出身で、そこでの活動や、ほかの学生劇団との交流などで出会ったメンバー一人ひとりに僕が電話して声がけし、9人集まった時点で結成しました。ところが全員プレーヤーだったので、マネージャーがいて欲しいよねということで募集したところ、端が手を挙げてくれました。それが芝居が上手くて、今ではメンバー10人全員がプレーヤーとして活動しています。
こんにち:結成することが決まっていたタイミングでコロナ禍になってしまったので、最初の1年間はうまくいかないことが多く大変でした。劇場でも客席を減らさなければいけなかったので、インスタライブで毎週配信劇をしたり、リモートでラジオドラマを収録して配信したりするなど、色々なことを試みた時期でもあります。メンバーはひとりも欠けることなく、しかも結成当初は関東と関西在住が半々くらいだったのですが、結局みんな東京に来てくれて、こうして活動できるようになりました。
客演の方に出ていただいたり外部のクリエイターを招いたりすることはありますが、劇団員だけでの公演の脚本を考える際は、この10人がいれば「こういう人が足りないな」というのがありません。今年、法人化したこともあり、僕の生活は南極を軸に動いていて、すべてを捧げるつもりでやっていることがまったく苦ではない、僕にとってはそんな存在です。
端:私が南極に入ったのは高校生のときです。高校2年のときに初めて小劇場でお芝居を観て、どハマりしてしまって。大阪は学生演劇が盛んなので、大学生の舞台をたくさん観に行くようになり、ある日SNSで「南極結成」という情報を目にしたんです。外部への発信の仕方のかっこよさがほかの劇団よりかっこいいしセンスも秀逸だと、気になる存在になりました。そしてマネージャー募集に飛びついた次第です(笑)。
南極は劇団員みんなの好きな方向性や「面白い」「素敵だな」と思うものが似ていたりかぶっていたりすることが多いんです。ひとりの「好き」の合わせてほかの人が付いていくというよりも、もともとみんな好きな方向が同じで、それが劇団という形でまとまっているところに、心地よさを感じます。
──南極の個性や強みはどんなところでしょう。
ユガミ:劇団員10人が全員、俳優としてだけでなくであり脚本を書いたりイラストを描いたりとか音楽を作ったり、メンバー各々のクリエイティブな力を持っているので、ひとつの作品を制作する際にパッケージまで作れるというのは強みだと思います。フライヤーなども「えっ、これも劇団で作ってるの?」と驚かれることがあります。
──今後はどのような活動をしていきたいと思われますか。
こんにち:以前、一軒家で6人のお客さんを相手にお芝居をしたことがありました。あの「家公演」はまたやってみたいですし、逆にすごく大きな劇場でも公演したいです。いずれは野外公演にもチャレンジしようと、劇団員たちとは話しています。また、僕らは東京を拠点にした頃から「東京芸術劇場シアターイーストで上演する」を目標のひとつとしてきたので、それも実現させたいですね。もちろん、新作には今後も精力的に取り組みます。
──都民芸術フェスティバル公式サイトをご覧の方へメッセージをお願いします。
超新作「wowの熱」、南極の劇団員10人がそのまま本人役を演じる、オーパーツのような超常現象のような、すごくワクワクした作品になっていると思います。
3月26日から3月30日まで、新宿シアタートップスで上演します。お待ちしています!