牧阿佐美バレヱ団 清瀧千晴さんにインタビュー

牧阿佐美バレヱ団 「ダンス・ヴァンドゥ Ⅱ」

歴史ある牧阿佐美バレヱ団が贈る、踊りの魅力を存分に伝えるステージ。
自分にとっても新しいチャレンジです。

2026年に70周年を迎える牧阿佐美バレヱ団。多くの有名バレエダンサーを育成し、古典からオリジナル作品まで幅広く取り組んでいる歴史あるバレエ団は、今回「ダンス・ヴァンドゥⅡ」として5つの作品を上演。ここでは“ルビーズ”に出演される清瀧千晴さんにお話をうかがいます。清瀧さんは、日本では上演機会がほぼないという演目の魅力や、バレエの楽しさを力強く語ってくれました。

清瀧千晴(きよたき ちはる)

1986年、群馬県生まれ。牧阿佐美バレヱ団所属。2007年、第64回全国舞踊コンクールバレエ第1部第1位、文部科学大臣賞受賞など数々の賞を受賞。モスクワ・ボリショイバレエ学校に留学し、230周年記念公演にも出演している。牧阿佐美バレヱ団ではプリンシパルとして『くるみ割り人形』、『眠れる森の美女』、『ドン・キホーテ』、『ロミオとジュリエット』といった作品で主役を務める。

バレエ界の巨匠、ジョージ・バランシンの世界を伝えたい

──上演される演目をご紹介ください。

今回は「ダンス・ヴァンドゥⅡ」ということで、5つの演目を上演します。僕が出演するのはジョージ・バランシン振付の「ジュエルズ」という作品から“ルビーズ”のシーンです。これに加えてローラン・プティ振付の「アルルの女」、牧阿佐美の振付、「飛鳥 ASUKA」からパ・ド・ドゥ、それから三谷恭三振付の「ヴァリエーションfor 4」、そしてアグリッピナ・ワガノワ振付の「ダイアナとアクティオン」となります。


──ジョージ・バランシンは20世紀を代表するバレエダンサー、振付師とうかがいました。バランシン作品にはどのような特徴があるでしょう?

バランシンはニューヨーク・シティ・バレエでたくさんの作品を作られてきた方。彼の作品には、肉体的な強さがあり激しく体を使うイメージがあります。これまで、牧阿佐美バレヱ団としてはロイヤル・バレエの作品を多く学び、上演してきました。たとえばフレデリック・アシュトン振付の作品など、足さばき、ステップが有名な作品も踊ってきたのですが、バランシン作品はまた違う印象です。バランシンらしいダイナミックさ、力強さがあるんです。これまで経験してきた踊りを活かして強くエネルギッシュなバランシンのスタイルをお届けできたらいいですね。

今回、バランシン財団の方から指導を受けてリハーサルもできるので、独特の動きの型や、音楽の捉え方を大切に演じていきたいです。また、海外の第一線で活躍してきたダンサーも集結しますので、日本人ならではの器用さや正確さ、そういう要素を加えて、さらにバランシンの魅力をお伝えできると思っています。

日本での上演が1997年以来の演目、“ルビーズ”に挑む


1997年「ダンス・ヴァンテアン」での“ルビーズ”
撮影・山廣康夫(牧阿佐美バレヱ団提供)

──ご出演される“ルビーズ”についてもう少し詳しく教えてください。どのような作品なのでしょう?

バランシンが初めて3幕構成で振付をした作品「ジュエルズ」という作品で、“エメラルズ(Emeraids)”、“ルビーズ(Rubies)”、“ダイヤモンズ(Diamonds)”から成っています。
今回“ルビーズ”の部分を踊らせてもらえるのが、すごい楽しみなんです。古典バレエはストーリーがあり、音楽もそのストーリーを助ける形で流れていきますが、バランシンの特徴は物語性がなく抽象的ということ。物語を排除した分、振付の動き、とくに先程お話した、足さばきの部分を注目していただけるのではと思っています。“ルビーズ”は、日本では本当に上演機会が少ない作品で、1997年以来。日本で上演している団体は牧阿佐美バレヱ団だけですし、僕も一度、海外で公演を見たことはあったんですが、踊るのは初めてなんですよ。とても楽しみにしていますね。

また、音楽も魅力です。“ルビーズ”はストラヴィンスキーの曲で、作品の持つ情熱的な部分や活発な雰囲気が表現されています。ダンスも相まってとても見応えのある作品ですね。僕は個人的にもストラヴィンスキーの楽曲がとても好きなんですが、本当に曲の魅力が詰まった作品だと思っています。ほかの2幕は今回、上演がないのですが、“エメラルズ”がフォーレの楽曲、“ダイヤモンズ”はチャイコフスキーとバラエティーに富んだ曲が、それぞれイメージに沿って作られています。「ジュエルズ」は音楽的にも肉体的な動きも魅力的な作品なんです。

牧阿佐美バレヱ団は衣装、舞台装置にまでこだわり抜いているのが特徴です。

──「ダンス・ヴァンドゥ」第2弾ということでしたが、どういった公演になるのでしょうか?

牧阿佐美バレヱ団としては以前「ダンス・ヴァンテアン」という公演を行なっていました。これは21世紀に向けて新しい作品や新しい取り組みを皆さんにお届けしようというコンセプトでしたが、「ダンス・ヴァンドゥ」では21世紀を迎えて、これから22世紀に向かって新しい作品や取り組みを踊りつないでいこうという想いが詰まっています。今回は曲も踊りも楽しめる5作品なので、ダンサーとしてもすごく楽しみですね。


──牧阿佐美バレヱ団の歴史をお教えください。


「アルルの女」撮影・瀬戸秀美(牧阿佐美バレヱ団提供)

牧阿佐美バレヱ団は2026年に創立70周年を迎える、日本でも歴史あるバレエ団のひとつです。チャイコフスキー三大バレエと言われている「白鳥の湖」、「眠れる森の美女」、「くるみ割り人形」をはじめとした古典作品では、こだわり抜いた衣装、装置、照明なども用いて積極的に上演を重ね、大切に今につないできました。また、それ以外にもたくさんのレパートリーを上演しています。

──絢爛豪華な衣装や、美しい舞台が印象的ですね。

制作時には本場の一流の方々にお願いして、時代背景やその作品の解釈なども含め大切に作り上げています。セットもそうですし、衣装も材質など細部までこだわっているんです。ダンス以外にも、そういったこだわりもお客様に伝わるのではと思っています。

3歳から始まったバレエ人生、本場で学べたことが大きかった。

──清瀧さんがバレエを始められたきっかけを教えてください。

父親がバイオリン、母親がチェロを弾いていたんですけれども、本当に舞台が好きで、昔からたくさんの舞台を観に行っていたようです。やはり子どもにも何かやってほしいという想いはあったのだと思います。6歳年上の兄は僕が生まれる前からバレエをやっていました。なので、僕は母のお腹の中にいるときから稽古場には通っていたわけですね。そういう経緯もあり、僕がバレエを始めたのは3歳くらいです。


──牧阿佐美バレヱ団に入ったきっかけを教えてください。

もともと、地元の群馬県でバレエをやっていたんです。そこはモダンバレエのスタジオだったので、クラシックバレエをちゃんと学びたいなら、牧阿佐美先生と三谷恭三先生に見てもらいなさいということになりました。関連団体のA.M.ステューデンツやジュニアバレエに小学生の頃から通い始めて、その後、橘バレヱ学校に入学し、卒業後に牧阿佐美バレヱ団に入団しました。中学校のときのコンクールでロシアのボリショイバレエ学校に留学するきっかけがあり、当時は楽器もやっていたんですけど、楽器をやめてバレエのほうに集中しようと決めたんです。

──留学経験は踊りにどんな影響を与えましたか。

影響はかなり大きかったですね。環境が日本とは全然違う。劇場文化が街に根付いているし、街並みや劇場自体が作品のようにきれいでした。そういう環境のなかで学ぶことは、音楽的な部分も、踊りの表現にも良い影響を与えてくれました。本場の空気を感じながら勉強できたのがよかったんだと思います。

その瞬間しか味わえない劇場の空気を、お客様と共有したい。

──ずばりバレエの魅力は?

バレエは総合芸術といわれているように舞台美術もそうですし、照明なども含めたくさんの芸術が舞台中に集められています。それゆえ、一回性の芸術ともいわれていますよね。また、その一瞬のダンサーの踊り、動き、その劇場内の空気は本当にその時にしか味わえないので、やはりそこが魅力だと思います。今回は“ルビーズ”を踊りますが、新しい作品にチャレンジできる貴重な機会なので純粋に楽しみですし、それをお客様と共有できることをすごく楽しみにしています。

──初めてバレエを観る際のコツはありますか?

全幕のバレエだと上演時間も長く敷居も高めですが、今回は本当に見やすい長さの作品ばかりです。また聞きなじみのある曲や、“ルビーズ”のように上演自体が珍しい作品も上演されるので、初めての方も楽しんでいただけると思いますね。

バレエそのものの魅力を堪能できる作品ばかりです。

──最後に、お客様へ、メッセージをお願いします。

多彩なバレエ作品の魅力を紹介する「ダンス・ヴァンドゥ」シリーズ2回目の今回は2024年に生誕120年を迎えるジョージ・バランシンと、生誕100年を迎えるローラン・プティ、そして牧阿佐美、三谷恭三の作品など、珠玉の5作品を上演する貴重な舞台となっております。



牧阿佐美バレヱ団 「ダンス・ヴァンドゥ Ⅱ」 公演情報はこちら

2024都民芸術フェスティバル公演情報

都民芸術フェスティバル アンケート 都民寄席アンケート 民俗芸能アンケート
お問合せ
ページの先頭へ