特集8:夢の世界を支える基盤と創造力|2017都民芸術フェスティバル 公式サイト

読み上げブラウザ用メニュー

メインメニュー

このページの本文へ

  1. Home
  2. 特集
  3. 夢の世界を支える基盤と創造力

2017都民芸術フェスティバル 公式サイト

夢の世界を支える基盤と創造力

小山 久美(おやま くみ)

小山久美さん
小山 久美さん

慶應義塾大学文学部哲学科卒業。1979年、スターダンサーズ・バレエ団入団。1984年、North Carolina School of the Artsに留学。その後、文化庁在外研修員としてアメリカにてメリッサ・ヘイドンに師事。翌年より、フロリダのタンパ・バレエ団に参加し、ソリスト等を務める。帰国後は、ピーター・ライト版『ジゼル』『くるみ割り人形』をはじめ、アントニー・チューダー『リラの園』『火の柱』、ジョージ・バランシン『セレナーデ』『ウェスタン・シンフォニー』、ケネス・マクミラン『ラス・エルマナス』等数多くの作品に主演している。
1992年、村松賞受賞。2003年、スターダンサーズ・バレエ団総監督に就任。2008年より昭和音楽大学短期大学部教授、2009年より昭和音楽大学バレエ研究所所長。近年は、子どもたちのための芸術体験プログラムや障害者に向けたワークショップを積極的に行い、教育・普及活動にも力を注いでいる。現在東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の文化・教育委員、文化庁長官アドバイザリーメンバーも務める。

安達 悦子(あだち えつこ)

安達悦子さん
安達 悦子さん

松山バレエ学校で学び、バレエ団でソリスト、プリマとして踊る。1979年慶應義塾大学在学中、第1回アメリカジャクソン国際コンクール銅メダル受賞。同年、文化庁在外研修員としてモナコに留学し、マリカ・ベゾブラゾヴァの指導を受ける。86年東京シティ・バレエ団入団。プリマとして『白鳥の湖』『ジゼル』『コッペリア』『エスメラルダ』『真夏の夜の夢』などに主演する。2008年文化庁研修員としてベルリン国立バレエ団に派遣され、ベルリンを拠点にヨーロッパ各地で研鑽を積む。09年4月より、東京シティ・バレエ団理事長および芸術監督に就任。江東区との芸術提携を軸に多彩なバレエ団活動に努め、『ベートーヴェン 交響曲第7番』(ウヴェ・ショルツ振付)の日本初演を実現させ好評を博した。
主な受賞歴に、音楽新聞新人賞、第30回橘秋子優秀賞(2004年)、第38回橘秋子特別賞(2016年)など。現在、洗足学園音楽大学バレエコース教授。

スターダンサーズ・バレエ団公演「バランシンからフォーサイスへ」

公演情報はコチラ

東京シティ・バレエ団公演「TOKYO CITY BALLET LIVE 2017」

公演情報はコチラ

2017都民芸術フェスティバルではバレエの演目が充実し、日本バレエ協会のプロデュース公演のほか、東京を拠点に活動されている3つのバレエ団の作品をご紹介できることになりました。本日はその中から、スターダンサーズ・バレエ団総監督の小山さん、東京シティ・バレエ団芸術監督の安達さんにお越しいただけましたので、ぜひバレエ団という組織を率いるお立場から、お話を伺えればと思います。それぞれのバレエ団の概要や特色を教えていただけますでしょうか。

小山 スターダンサーズ・バレエ団は1965年、前代表の太刀川瑠璃子が立ち上げました。設立のきっかけは、太刀川が振付家アントニー・チューダーと出会ったことです。それまでの妖精やお姫様しか出てこないバレエではなく、私たちと同じ人間を描いたチューダーの作品に衝撃を受けた太刀川は、彼を日本に招きます。そして国内の各バレエ団の代表的なダンサーに声をかけ「スターダンサーズによるチューダー・バレエ特別公演」をプロデュースし、大成功を収めました。それがきっかけとなって同じ志を持つ仲間が集まり、スターダンサーズ・バレエ団が誕生しました。ですから名前の由来は「スターのダンサーたちを集めた」この公演です。また、チューダーが「バレエは言葉の壁を越えてみんなが楽しむ芸術。日本のバレエも世界のバレエと肩を並べることを目指し、私の作品を役立ててもらいたい」という言葉を贈ってくれたことも設立のきっかけとなりました。以来、日本人振付家による新しい作品を精力的に発表し続けるとともに、バランシンやフォーサイスをはじめとする世界に認められた名作の数々もレパートリーに加え、古典から現代作品まで幅広い上演レパートリーは150を超えました。設立から半世紀以上が経ち2012年には公益財団法人となりましたが、一貫しているのは「海外の作品を紹介しつつ自分たちも学び、日本からバレエを発信する」という志です。私は2003年から2代目の代表、総監督を務めています。

安達 東京シティ・バレエ団は、1968年に日本初の合議制バレエ団として誕生しました。当時はバレエ教室の先生のもとに生徒が集まり、規模が大きくなってバレエ団となるという流れが一般的で、団長一人の意志で運営が決定されるのではなく、話し合いによって運営されるバレエ団は珍しかったと思います。以来、クラシックと創作を両輪として、古典から創作まで110を超える作品を上演、総ステージ数は約1500にのぼります。昨年には公益財団法人に認定されました。私は1986年に入団し、2009年から4代目の理事長を務めています。
バレエ団の大きな特色は江東区と芸術提携を結んでいることです。自治体との提携は日本のバレエ団としては初めてのことで、ティアラこうとう(江東公会堂)での定期公演をはじめ、同じく芸術提携団体である東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との教育プログラムなどを行っています。地方行政に関わる方々と一緒に舞台を作り上げていけるということには、とても大きな意味があります。バレエは敷居が高いと思っていらっしゃる方へアプローチできる機会がぐっと増えましたし、それによってバレエにより親しんでもらえるようになりました。私たちだけでは思いつかなかったようなアイデアや企画を提案していただけることもあり、勉強にもなります。東京シティ・バレエ団はもともと新しいことにチャレンジする気風があるので、今後も江東区とタッグを組み、江東区から世界に誇れるバレエを発信していきたいと思っています。

バレエという芸術にとって、バレエ団という組織の重要性とはどのようなものですか。

安達 コール・ド・バレエ(群舞)のアンサンブルでは、普段から同じバレエ団で一緒に稽古をしているということがとても大切です。音楽だったら共通の楽譜をもとに各自で練習し、それから合奏という形も取れますが、バレエには楽譜がないので最初から一緒にやっていないとアンサンブルが成立しません。ですからバレエ団はなくてはならないものです。

小山 オーケストラの場合は楽譜という作曲家のパワーが凝縮された「そこに従うべきもの」が明確にありますものね。バレエは非常に非効率な肉体というものが相手ですから、ジャンプした高さの違いは感覚や人の目に頼るしかありません。楽譜のようなものがないから、手間暇がかかります。また、日本ではバレエというとコンクールや発表会や子どもが稽古している姿を想像する方が多いかもしれませんが、海外では総合芸術として舞台の上で行われている作品を指します。個人で踊っているものをバレエと呼ぶよりも、劇場での総合芸術という認識から始まるので、そうなると必然的にバレエ団の存在が不可欠であるということになります。

インタビュー風景

バレエの魅力とはどのようなところだと思われますか。

安達 私たちは小さい頃にバレエと出会い、その魅力というよりも魔力にかかってしまった感じですね(笑)。本物を見ると子どもでもその「すごさ」がわかるので、自分もその世界に入りたい、浸りたいと思いました。踊るって、言葉より先にあった、人の本能のようなものではないでしょうか。また、東京シティ・バレエ団とのコラボレーションによって初めてバレエに触れた他の分野の芸術団体の方は、「バレエは非日常の夢の世界」と言っていました。それもバレエの魅力と言えるでしょう。

小山 自分の思っていることを表現する手段は、人によって言葉だったり音楽だったり絵画だったりといろいろですが、私たちは肉体を使って踊ることで伝えます。これがダンサーにとって究極の魅力だと感じます。ままならない肉体ゆえにゴールを目指してもむしろ遠ざかるようなところは、まさに「魔力」ですね。

安達 簡単に手に入らないものに、ダンサーは惹かれるのかもしれません。

小山 同じ演目でも同じ結果にはならない、答えが1つではないという点もダンサーにとっては魅力ではないでしょうか。

今回上演される作品のご紹介をお願いいたします。

「バランシンからフォーサイスへ」チラシ
PDF(1.02MB)

小山 20世紀を代表する偉大な振付家ジョージ・バランシンの作品と、現代の巨匠ウィリアム・フォーサイスの傑作を集めたプログラムになっています。バランシンは世界中のバレエ団の中でもっとも多くのバレエ団がレパートリーに入れている振付家で、クラシックバレエの動きの可能性を広げた人です。そのため動きのダイナミックさが際立つ作品が多く、そのバランシンの流れがさらに発展した先にフォーサイスがいます。決められた動きの型を広げたり伸ばしたりしたのがバランシンなら、フォーサイスは垂直という概念さえも崩したらどうなるのかというところまでいきました。日本のバレエ団初の上演となるフォーサイスによって振り付けられた作品『N.N.N.N.』では、その自由な動きを感じていただけると思います。私はこの作品を初めて鑑賞した時に大きな衝撃を受け、ぜひ日本でもやりたいという思いを温め続けて、今回ようやく実現しました。バランシン作品からは、チャイコフスキーの弦楽四重奏の調べに乗せて体で音符を表すような『セレナーデ』と、ウェスタン調の陽気な音楽と小粋な振付による『ウェスタン・シンフォニー』を上演します。これらの3演目は、現在の世界のバレエにおける潮流の紹介にもなっていると思います。

「TOKYO CITY BALLET LIVE 2017」チラシ
PDF(1.1MB)

安達 今回はバレエに詳しい方から初めて見る方まで、いろいろな方に楽しんでいただきたいということを念頭に置いたプログラムになっています。昨年上演した『ベートーヴェン 交響曲第7番』の振付でも知られるウヴェ・ショルツによる『Octet』は日本初演となります。彼の作品は音楽そのものですから、それに合わせてダンサーもドレスや貴族風のジャケットを身につけ、サロンで男女の機微が感じられるようなスタイルとなっています。振付はスコアに忠実なので、ぜひ「見る音楽」を楽しんでいただきたいですね。『譜と風景』は、日本でも活躍しているアレッシオ・シルヴェストリンが雅楽を用いて振り付けました。ヨーロッパのコンテンポラリーバレエの動きと、和の絶妙な掛け合いが楽しめる作品です。日本人が雅楽を聞いて振り付けるのとはまるで違うので、そこも見どころになっています。そして古典バレエの名作『パキータ』は、「ザ・クラシック」なので、クラシックバレエならではの様式美でお見せします。このように、振付家の個性が光るコンテンポラリー2作品と、バレエの原点に立ちかえる古典作品を一度に楽しんでいただけるプログラムです。

ふだんはあまりバレエを見ないという方に、バレエの楽しみ方のアドバイスをお願いします。

小山 「バレエは敷居が高い」とか「何を着ていったらいいの」とか「拍手はいつすればいいんだろう」とか、色々考えてしまいがちかもしれませんが、どうかそんなことは気にしないで欲しいですね。拍手なんていつでもいいし、したくなければしなくたっていいんです。大切なのは、客席で居心地のよさを感じられること。「バレエってこういうもの」と頭で考えたり決めつけたりせず、舞台で起こっていることを純粋に、そのまま、リラックスして見て、そして何か心に触れるものがあればいいと思います。たとえその時に感じるものがなかったとしても、家に帰ってしばらくしたらいきなり噴き出してくるかもしれません。バレエってそういうものなので、ぜひ肩の力を抜いてご覧になってください。私としては周囲の方に迷惑をかけない程度なら、思わず声が出てしまってもいいと思っています。特に今回の演目はそういう作品ですよ。

安達 難しいことを考えなくても、何の知識のないままでも、楽しめるのがバレエです。予習も不要だし、ましてや客席で緊張する必要もありません。しかも今回は、スターダンサーズ・バレエ団さんも東京シティ・バレエ団も、どちらも3本立てのプログラムで、バレエを様々な角度から気軽に見ていただけるような構成になっていますからなおさらです。「考える」より先に「感じて」ください。

小山 演目はバランスを考えて組むので、さまざまなテイストのバレエが見られるのが、今回の私たちの公演の「お得」なところです。東京シティ・バレエ団の『パキータ』には多くの方がイメージする「バレエ」が含まれている一方、雅楽とバレエの融合といった作品もありますよね。「バレエ=白鳥の湖」という1つのイメージだけを持っている方も少なくありませんが、今回は2つのバレエ団の6作品すべて、それとはまったく違うイメージになるでしょう。そしてそれが今のバレエでもあるのです。世界のレベルと遜色のない作品が集まったので、普段バレエに縁のない方ほど、ぜひ見に来ていただきたいですね。

ページの内容終わり

このページの関連メニュー

TOPへ