特集3:浪曲の今とこれから|2017都民芸術フェスティバル 公式サイト

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浪曲の今とこれから

玉川 奈々福(たまがわ ななふく)さん
玉川 奈々福(たまがわ ななふく)さん

玉川 奈々福(たまがわ ななふく)

浪曲師、曲師。神奈川県生まれ。
一生習える「習いごと」がしたいと1994年、日本浪曲協会主催の三味線教室に参加。稽古するうちに浪曲三味線に魅せられ、翌95年、二代目玉川福太郎に入門。師の勧めにより2001年より浪曲師としても活動。
04年「玉川福太郎の徹底天保水滸伝」、
05年「玉川福太郎の浪曲英雄列伝」プロデュース。
06年映画「ナミイと唄えば」(本橋成一監督)出演。
同年、芸名を玉川美穂子から玉川奈々福に改め名披露目。
さまざまな浪曲イベントをプロデュースするほか、自作の新作浪曲も手がけ、他ジャンルの芸能、音楽との交流も多岐にわたり行っている。
公式ブログ ななふく日記 http://tamamiho55.seesaa.net/

第47回 都民寄席

公演情報はコチラ

浪曲とはどのような芸能なのですか。

浪曲は、もとは浪花節(なにわぶし)という明治時代初期から始まった芸能で、三味線を用いて節(ふし)と啖呵(たんか/台詞)で物語を演じる語り芸です。浪曲の前身となる芸能は江戸時代の大道芸で、世間の出来事を面白おかしく早口で話す「ちょぼくれ」「ちょんがれ」や、説経祭文などの諸芸能が混じりあって生まれました。明治時代になると、芸能活動のジャンル申請をして政府から鑑札を得る必要が生じたため、関東では江戸時代の末期に流行していた浪花伊助の節から「浪花節」(これについては諸説あります)、関西では明治の後年まで「浮かれ節」で鑑札を取っていました。
三味線が使われる前は木魚やほら貝などの鳴り物と一緒に節つきで語られ、大道芸からの流れとあってよしず張りの開きでやっていました。それが日露戦争頃に桃中軒雲右衛門という浪曲師が紋付袴姿で登場、舞台を美しい屏風で飾りテーブル掛けも豪華にします。この舞台様式が現在の浪曲のスタイルとなり、浪曲人気が一気に高まりました。以来、昭和30年代の前半まで日本で最も人気のある芸能の1つとして栄えてきました。現在、落語家は東西合わせて800人ほどと言われていますが、最盛期の浪曲師は全国に3000人いたといわれています。

関東節と関西節はどのような違いがあるのでしょう。

私の声の高さで節をやる場合、三味線を高く合わせるのが関東節、低く合わせるのが関西節です。また、啖呵、いわゆる語る部分が多いのは関東節で、歌い込む部分が多いのが関西節と言われています。ただ浪曲は同じ演目をやっても演者ごとにうなり方が異なるので、一概には言えない部分がありますね。さらに、落語の場合は同じ演目を共有しますが、浪曲はお家芸のようなものがあり、流派によって演目に傾向があります。たとえば私の「玉川」は任侠伝が多いといった具合です。

浪曲の魅力とはどんなところですか。

「一人の芸ではない」ということが、一番の魅力ではないかと思います。うなる演者と三味線の曲師の両方がいて成立する芸能であるということですね。
浪曲には譜面が一切ありません。基本的な三味線の節の「手」のようなものはあり、最初は演者も曲師もそれを体に叩き込むのですが、いざ舞台に立った時はその「手」にこだわっていてはいけないのです。その時その時のセッションで進んでいくので、「あら、三味線がそう来るんだったら私はこうやってみよう」とか、「そんな風に節を伸ばすのなら、私はもうちょっと引こうか」など、演者と曲師の呼吸で変わります。何拍といった拍も決まっていなくて、「今日は声が出るからここまで伸ばそう」、「今日は会場が静かだから声を張ってお客さんを煽ろうか」など、その時のさまざまな状況に応じて臨機応変に対応し、曲師とあ・うんの呼吸で合わせていきます。その固定されない感じも、演じていてとても魅力に感じます。

玉川 奈々福(たまがわ ななふく)さん

今回の都民寄席「浪曲の会」で上演される『浪花節更紗』はどのようなお話なのでしょう。

第47回 都民寄席チラシ
PDF(308KB)

原作は正岡容(いるる)の短編小説です。正岡容は寄席に関しての書き物が多く、それに惹かれて俳優の小沢昭一さんや加藤武さん、劇作家の大西信行先生、落語家の三代目桂米朝師匠、民俗芸能評論家の永井啓夫さんなどが門下生となりました。自分でもうなるほど浪花節が好きな方で、この小説も明治20年代を舞台にした浪花節修業の青春物語です。主人公の「どんな苦労をしてでも浪花師になりたい、そしてなるからには日本一になりたい」というまっすぐな思いに、私は読んでいてぐっときますね。これを浪曲にすることで、「浪曲とはこういう芸能なんですよ」とお客様に伝えやすいのではないかと考え、今回も上演させていただきたいと思いました。ほろっとするいい話なので、浪曲初心者にも楽しんでいただけます。

これまであまり浪曲をこれまで聴いたことがないという人が、浪曲を楽しむコツなどがありましたら教えてください。

みなさん、おそらく最初は「わかりたい」と思われるはずです。浪曲は「節」という歌う部分と「啖呵」という語る部分に加えて三味線もあって、しかもその三味線がときどきかけ声を発します。そのため、最初はどこを見ればいいのか、何を聞けばいいのか、要素が多すぎて戸惑われるかもしれません。そこで、あまり頭で考えず、まずは身をゆだねて見ることをおすすめします。「あっちを見なきゃ、こっちも聞かなくちゃ、話も理解しなくちゃ」ではなく、「詳しいことはよくわからないけれど気持ちよかった」、「三味線の音色がかっこよかった」など、1つでも心に響くツボのようなものを見つけていただければ、最初は十分だと思います。事前に予習も必要ありません。ただ、ひいきの浪曲師が出てきたら「待ってました!」「日本一!」など声をかけたり拍手したりすると会場も浪曲師も盛り上がるので、そういった前のめりの姿勢で楽しんでいただければいいのではと思います。
また、浪曲は基本現代の言葉で語りますが、江戸時代のお話などでは、古い言葉が出て来ることもあります。昔の言葉が難解と思われるかもしれませんが、昔の言葉だからこそのよさがありますし、わからないと興味も抱けないかと言えば、そんなことはありません。ですから、必ずしも現代の言葉に直していかなければいけないことではないと思っています。

浪曲の現状とこれからの展望について、奈々福先生が考えられていることをお聞かせください。

現在、浪曲師は東西合わせて100人いません。しかもそのうち20~30人は曲師ですから、実際は数十名ということになります。私がこの世界に入った22年前は、唯一残っている浪曲の定席、浅草の「木馬亭」にいらっしゃるお客さんも本当に少なくて、この先どうなるんだろうと不安に思っていました。それが最近、木馬亭は右肩上がりに客足が伸びています。最近の雑誌でも、86ページもの特集を組んで浪曲を取り上げてもらいました。若手もどんどん伸びて来ていて、これまでは先輩の方々がご高齢で亡くなるたびに肩を落としていたのですが、気がつけば下から突き上げられるような気運を感じるようになりました。
また、浪曲は伝統芸能ではなくて大衆芸能なので、何もかも昔の通りというわけではなく、常に目の前のお客さんと一緒に生成していくものだと思います。ですから古典は残りつつも、新作も随時生まれています。私も作りますが、身の回りのことを題材にした身近な浪曲を作っている人、おとぎ話を浪曲にしている人、短い浪曲を作っている人など、若手を中心に新作浪曲がどんどん生まれています。元来、浪曲は常に新しい作品が生まれる世界なので、今後も時代に即した作品が誕生し続けるでしょう。それは浪曲の大きな強みだと思います。

奈々福先生はなぜ浪曲の世界に進まれたのですか?

私はもともと浪曲の「ろ」の字も知りませんでした。ただ三味線が習いたくて、日本浪曲協会の三味線教室にお稽古事として通うようになったんです。三味線も当然素人だったので、長唄とか津軽とか浪曲の三味線とか、いろいろ種類があることもまったく知りませんでした。後になってわかったのですが、当時の日本浪曲協会は曲師が不足していて、生徒の中で「これはいけそうだ」と思った人をスカウトするというミッションが進行していたそうです(笑)。そんなことは何も知らない私が通い始めて半年ほど経った時、「教室で弾いてるだけじゃうまくならないぞ」と、のちに師匠になった故・玉川福太郎に誘われて師匠のお宅へ遊びに行ったら、入門話になっていました(笑)。ですから最初は曲師としてデビューし、その後演者となりました。

観客の方へのメッセージをお願いいたします。

浪曲にはかつて「おじいさんが青筋立ててうなる古臭いもの」というイメージがありましたが、この10年でかなり払拭されました。そもそもそのイメージすら持っていないほど新しいお客さんが見に来てくださるようになったからです。私は若い女子とユニットを組んだりしてこの昔ながらのイメージとずっと戦ってきたので、この傾向をとてもうれしく思っています。今回の公演も肩肘張らずにのんびりと、落語と同じような気分で聞いていただければと思います。また、「浪曲は笑ってはいけない」というのも間違いで、私の演題も含め、今回は泣かせるばかりではなく笑いの入るお話が多いので、ぜひ気負いなく笑ってください。

※ 正岡容(1904-1958)は寄席芸能研究家、小説家、随筆家。

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