特集1:古典の作品世界に破天荒に挑む|2017都民芸術フェスティバル 公式サイト

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2017都民芸術フェスティバル 公式サイト

古典の作品世界に破天荒に挑む

戌井 昭人(いぬい あきと)

戌井昭人さん
戌井 昭人さん

1971年、東京都生まれ。玉川大学文学部演劇専攻卒業。文学座付属演劇研究所を経て、1997年、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。2009年『まずいスープ』で芥川賞候補になり、2013年『すっぽん心中』で川端康成文学賞受賞。『俳優・亀岡拓次』は2016年に安田顕主演・横濱聡子監督で映画化され、その続編『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞受賞。

流山児 祥(りゅうざんじ しょう)

流山児祥さん
流山児 祥さん

1947年、熊本県生まれ。1970年、「演劇団」を旗揚げし、その後「流山児★事務所」を設立。演出作品は300作を超え、1991年の韓国公演より積極的に行っている海外での評価も高く、また「楽塾」「パラダイス一座」等シルバー演劇における先駆的な活動で、国内外を爆走中。第44回紀伊國屋演劇賞、第7回倉林誠一郎記念賞、ビクトリア国際演劇祭グランプリ等、受賞多数。日本演出者協会副理事長。

流山児★事務所『だいこん・珍奇なゴドー』

公演情報はコチラ

最初に、流山児★事務所についてご紹介いただけますでしょうか。

流山児 1984年7月に設立した演劇企画集団かつ劇団で、簡単に言えば「何でもあり集団」です。国内でも海外でも活動の場に縛られることなく、アングラからシェイクスピア、ブロードウェイミュージカルまで、あらゆるジャンルの作品をボーダーレスで上演する稀有な劇団です。中国で1カ月もの間公演した日本の劇団はうちだけですから、中国でも有名ですよ。
演劇を小さな空間に収めたくなくて、気持ちが肉体から外に出ていったり、言葉が体からはみ出したりする演劇をやり続けてきました。そんな僕を世の中の人はアングラと言うんでしょうが(笑)。でも本来、演劇とはそういうものだと僕は思っています。アングラって「怖い」とか「不安な演劇」という感じがするかもしれませんが、その感覚は大切です。観て不安にならない芝居って毒にもならない、凡庸としたわかりやすい芝居ということでしょう? 僕はなるべくわかりにくい芝居をやりたい。何か面白いものを、誰かの記憶に残るような芝居をしたい。だから年間5~6本も公演しているんです。劇団員も僕と一緒に面白いことをやろうという、ちょっとはみ出した人たちが集まっています。

戌井さんに書き下ろしの作品を依頼されるようになった経緯を教えてください。

流山児 戌井昭人さんのおじいさんである元文学座代表の戌井市郎さんとは、「パラダイス一座」という平均年齢80歳の座組みで芝居をやりました。これは僕が「90歳になったんだから芝居やってみない?」と戌井さんをくどいたら「やってみようかな」と実現したことなんですが、そんなある日「孫が書いた」と言って本を渡してくれました。それが面白くて、孫が書いた戯曲で戌井市郎さんが出演するような芝居をやりたいなと思ったのがきっかけでした。

戌井  『まずいスープ』という最初の作品です。

流山児 あれ、芥川賞候補にもなりましたね。それで孫の戌井さんをくどいて、ゴーリキーの『どん底』を下敷きにした『どんぶりの底』ができました。

インタビュー風景

今回は『ゴドーを待ちながら』をモチーフに新たに書き下ろされる新作とのことですが、こういったテーマや脚本の方向性は、どのように決められたのでしょうか。

流山児 戌井さんがすごく面白いことを言ったんですよ。『ゴドーを待ちながら』のことを「なんであれ、長いんだ」って。

戌井  無駄に長い気がしていたんですよね。それに不条理なのに真剣だし、本当はもっとくだらないものだったんじゃないかなと思ったんです。けれど作者のベケットはいたって真面目な感じで書いているので、それなら真面目じゃないのもあっていいんじゃないかなと、えらそうに思ってみました(笑)。それで以前、『ゴドーを待ちながら』をモチーフにして45分程度の短い作品を上演したことがありまして、今回、流山児さんにその時の台本を見せたら「これをベースにしてやろう」ということになりました。でも流山児さんが「女は3人出して」とかどんどん言ってくるものですから(笑)、大幅に加筆したので登場人物も増え時間も長くなり、前作をベースにしながら、ほぼ新作になっています。

流山児 飲みながら話していたら話がどんどん膨らんで(笑)。『ゴドーを待ちながら』を知っていればもちろん面白いですが、知らなくても充分楽しめるし笑える作品になりました。

今回の公演の見どころはどのようなことになりそうでしょうか。

だいこん・珍奇なゴドーチラシ
PDF(1.14MB)

流山児 『ゴドー』はどんな風にも読める作品です。原爆の話だとも言われますし、それはいちばんわかりやすい解釈だと思います。原爆という不条理を体験した後、1950年代にベケットが書いたものですから。今の時代のボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したのも、『ゴドー』と同じように現在の社会におけるひとつの現象だと思います。戌井さんの台本を読むと、人間というのは「管」でしかないと強く感じます。管というか、筒というか。「人間って何なんだろう」ということを強く考えさせられるんですよね。それを演出では、「ダイコンさん」や大根を使って表現するわけです。2000本くらい干し大根を用意して、それをすべて上から落とそうかというプランまで出たんですよ。それから、今回は劇団員のほかにも、元・状況劇場の怪優・大久保鷹をはじめとする実力派俳優陣が出演、さらにパーカッション奏者・栗木健さんによる生演奏もある演劇・音楽・ダンスの融合も1つの見どころです。そして観終わった時、ある寂しさのようなものが見えればいいんじゃないか、「人間って何なんだろう、ばかだなあ」と思えたらいいんじゃないかと思います。

戌井  大根というのは、僕がやっている鉄割アルバトロスケットで以前、大根田(おおねた)という人が役者でないのに芝居に出たいと言ってきて、台本を書くときに苗字を3文字書くのが面倒で「大根」と書いたんです。それなら芝居にも本物の大根を出そうという話になって(笑)、大根役者の大根にもかけて使いました。

流山児さんにとっての戌井さんの戯曲の魅力、戌井さんにとっての流山児さんの演出の魅力とはどのようなものですか。

流山児 僕は自分が壊れているような感じが好きなんですが、戌井さんの本を使うとどんどん壊れられるんですよね。それは大きな魅力です。役者もすごく自由な感じで。演出家や作家が1つの世界をがっちり固定して作るのではなく、ずれているところに面白味があるんじゃないかと思っています。そこで、その「ずれ」を実際に表現できる役者ばかり集めるとどんな風になるんだろうと思い、2014年に『どんぶりの底』を上演しました。そのメンバーが今回も出演するので、戌井さんの言葉を今度は役者たちがどう遊ぶか楽しみです。女性陣がみんな歌える上に男性陣は状況劇場や早稲田小劇場から連れてきますから、それだけでも面白そうでしょう? 見世物をちゃんと見せてやれる作家ってそういないんじゃないかと思うので、戌井さんには今後もさらに破天荒にやって欲しいですね。

戌井  僕が書いたものを流山児さんはそのままどんとやってくれるんです。いい意味で細かいところがなくて、そこが魅力ですね。

テレビや映画とは違う、舞台ならではのお芝居の魅力とはどのようなところだと思われますか。

流山児 生で変な生き物が出てくるところですね。特に戌井さんとやる時は、なるべく変な生き物を使うようにしています(笑)。人間だって変な生き物ですからね。そうじゃないと戌井さんの文体に対抗できません。幸い、稀有な役者という面白い生き物がこれだけいるから、見世物として面白く、エンターテインメントとして成り立っています。

戌井  僕は芝居の本を書くことになるとは思ってもいませんでしたが、もともと自分が芝居する側だったことで舞台を想定しながら書けるという利点はありますね。書いていて頭の中にどんどん広がっていくのが面白いです。

流山児 演出もやればいいのに。

戌井  「いずれは」と言ってしまったら、流山児さんから「次やれ」と言われそうです(笑)。

観客の方へメッセージをお願いいたします。

流山児 とにかく面白い芝居にします。これだけ殺伐とした時代だからこそ、ばかばかしいことって本当はすごく豊かなことなんだって思ってもらいたいですね。この芝居を観て少しは「人間ってばかだなあ。でも捨てたもんじゃないな」と感じてくれればうれしく思います。

戌井  「何をやってるんだこの大人達は」と思って観てください(笑)。

流山児 子どもにも観てもらいたいですね。大根のスカートが出てきたりしてビジュアルがすごく面白いので、子どもにも純粋に楽しんでもらえると思います。今回の都民芸術フェスティバルでは柄本明さん演出で佑、時生の兄弟が『ゴドーを待ちながら』を上演したでしょう。そちらを観た方が僕らのを観ると、「同じ作品世界をベースにしながらもこれだけ換骨奪胎して作れるのか」と比較する楽しさも出てくるので、ぜひ見比べてみてください。

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