白石あゆ美さん 橋本直樹さん 林田翔平さんにインタビュー

日本バレエ協会 ユーリ・ブルラーカ版「ラ・エスメラルダ」全幕

めったに見られない、古典バレエの名作『ラ・エスメラルダ』の全幕上演

一部が上演されることは多いものの、全幕を堪能できる機会はめったにないという『ラ・エスメラルダ』。この貴重なプログラムに挑む3名の実力派ダンサーにお話をうかがいました。 日本バレエ協会 ユーリ・ブルラーカ版「ラ・エスメラルダ」全幕 公演情報はこちら


白石あゆ美 (しらいしあゆみ)

愛媛県出身。6歳でバレエを始める。ロシア・ボリショイバレエ学校に留学。帰国後、Kバレエ カンパニーに入団。2015年プリンシパルに昇格。退団後、フリーとして活動中。

橋本直樹 (はしもとなおき)

東京都出身。6歳でバレエを始める。ロシア・ボリショイバレエ学校に留学。国立バレエ・モスクワでソリスト、Kバレエ カンパニーでファーストソリストとして活躍。退団後、フリー。

林田翔平 (はやしだしょうへい)

福岡県出身。3歳でバレエを始める。新国立劇場バレエ研修所を経て新国立劇場バレエ団に入団、2015年にファーストアーティスト。2017年にスターダンサーズ・バレエ団に入団。

人間が持っている美しさや真実の愛、大どんでん返しも

──「ラ・エスメラルダ」はどんな作品ですか?

白石 これはフランスの小説家、ヴィクトル・ユーゴーの名作「ノートルダム・ド・パリ」に着想を得て、1844年に初演されました。舞台は15世紀のパリ、ロマ族の心優しい踊り子エスメラルダに、貧しい詩人のグリンゴワールやノートルダム大寺院の司祭に育てられた鐘楼守カジモド、司祭のフロロまでが好意を寄せるものの、彼女は護衛隊長のフェブに恋をしてしまいます。この四人を軸に、人間が持っている美しさや暗い部分、そして真実の愛にまつわるいざこざが繰り広げられ、最後には大どんでん返しが待っているという、私としてはとても演技のしがいがあるストーリーです。

どれだけ自信を持って舞台に立てるかという挑戦

──役作りについてお聞かせください

白石 エスメラルダはグリンゴワールを助けるために形だけの結婚をしたのであって、本当に好きなのはフェブ。そういった互いの微妙な関係や心情を、バレエはセリフがないので分かりやすく演技をする、もしくは演技というよりも自分自身がそう思い込むところまで持っていきたいですね。

橋本 役作りの面では、主役として周りを引っ張っていく存在でありたいと思いながらリハーサルに臨んでいるところです。私にとって、本番までしっかりリハーサルをして、どれだけ自信を持って舞台に立てるかという挑戦だと考えています。

林田 僕はこれまでに、「ラ・エスメラルダ」という作品の一部を観たり演じたりしたことはあったものの、全幕を観たことはありませんでした。だから、フェブがどんな役なのか全然想像がつきませんでしたが、ふたを開けてみるとイケメンというか軽い性格の男なんですね。稽古では橋本さんをはじめ先輩方の演技をよく見て、いいところは取り入れながら役作りをしています。

出会いのシーンは感情が揺れ動く瞬間がよく見える

──見どころを教えてください

白石 最後のほうの大どんでん返しのところの演技をするのが、とても楽しみです。どうやって表現しようかと自分でもワクワクしているので(笑)、そこはぜひ観ていただきたいですね。

林田 僕は最初のほうの、フェブが初めてエスメラルダと出会うシーンです。まだ序盤ですが、物語のキーになるアイテムが出てくるし、感情が揺れ動く瞬間がよく見えるところなので、そこは見どころのひとつだと思っています。

橋本 私は「ラ・エスメラルダ」のどの部分というよりも、舞台の空気感といいますか、さまざまな団体に所属していたりフリーで活動しているダンサーたちが、この公演のために全国から集まった結果、生まれた一体感といったものを感じていただきたいですね。

上手な方ばかりなので不安もなく挑戦できる

──リハーサルの様子はいかがですか

白石 この公演は3キャスト編成ですが、それぞれが所属するカンパニーやダンサーとして育ってきた環境によって、どの部分を大事にして踊るかが微妙に異なるのではないでしょうか。そのへんは、とても楽しみにしています。個性的で素敵な方が多いので、ご一緒できてうれしく思います。上手な方ばかりなので何の不安もないし、このメンバーだからこそ、私は挑戦できるという感じがしています。

橋本 今回、初めて組む方がたくさんいらっしゃるので、本番までにパートナーリングをどれだけいいほうに持っていけるか想定しながら稽古に臨んでいます。ただ、私はどちらかというとリハーサル前にあまり予想を立てず、まっさらな状態でスタジオに入るタイプです。どんな状況にも柔軟に対応できるようにしながら、少しずつ積み重ねていくしかないと思っています。

林田 僕は演技やパートナーリングについて、けっこう考えてしまいます。考えすぎてリハーサルで失敗するときもありますが、自分自身、ひとつひとつ磨き上げていくタイプのダンサーだと思っています。今回、初めて組むメンバーも多いのですが、確実にキャリアを積んで来られた方々なので、リハーサルが始まってみるとお互いに寄り添い合いながら踊っていただいており、安心して稽古に取り組んでいます。

劇場の全員が感動を共有するという素晴らしい経験

──これまでバレエに接点のなかった方でも楽しめますか?

橋本 バレエは踊りや音楽だけではなく、衣裳や装置もとても素敵だと思います。何よりも、ライブすなわち生の舞台であるということが一番の魅力。そのときその場で起きていることを劇場にいる全員が共有する、それは素晴らしい経験ですよね。特にこの作品は、ふだんはバレエにあまり接点がない方でも楽しめる作品だといえるでしょう。

白石 「ラ・エスメラルダ」は比較的古い時代の作品なので、マイムが多いんですね。登場人物の感情を、身振り手振りで表現しながら物語を進めていくところが面白い。観客が100人いたら100通りの解釈があるともいえるので、自分が好きなように理解していただければいいと思います。
あらかじめストーリーを知っていないと楽しめないのではないかといわれることもありますが、むしろ知らずに観たほうが、その人の感性に応じて自由な受け取り方ができるかもしれません。その経験は、初めて観た1回だけの貴重なものです。だから、私はまだ観たことがない人がうらやましいくらいです(笑)。

林田 僕も、予習をしないで劇場に足を運んでいただいていいと思います。受け取り方は人それぞれなので、あえて下調べをせずに観たほうが、すべてを新鮮に受け止めて楽しむことができるのではないでしょうか。

全幕上演は日本でもめったにない機会です

──お客様にメッセージをお願いします

白石 今回、初めて「ラ・エスメラルダ」という作品を踊らせていただきます。全幕上演は日本でもめったにない機会だと思いますので、ぜひご覧ください。お待ちしております。

橋本 主役として周りのダンサーを引っ張っていけるよう、本番に向けて稽古をがんばっていますので、ぜひ劇場にお越しください。

林田 「ラ・エスメラルダ」は、バレエにあまりご縁がなかった方も熱心なファンの方も、いままで経験したことのない世界観を味わえる舞台だと思いますので、ぜひ劇場にお越しください。

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