演出家 高木達さん テノール 海道弘昭さんにインタビュー

日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.83「ミスター・シンデレラ」〈新制作〉

家族みんなが笑顔になれる日本語オペラ、その音楽、ライブ感に圧倒される。

うだつのあがらないミジンコ研究者の主人公が、赤毛の素敵な女性に変身。そんなユーモラスなストーリーの「ミスター・シンデレラ」。日本語でわかりやすく、家族で楽しめる作品です。このオペラに対する想いを演出家、主演歌手、それぞれの視点から語っていただきました。 日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.83「ミスター・シンデレラ」〈新制作〉 公演情報はこちら


演出家 高木達 (たかぎとおる)

福島県出身。明治大学文学部演劇学科卒業。大学卒業後に劇団青年座に入団。作家、演出家として活躍し1989年にはイタリア放送協会賞を受賞。ストレートプレイからミュージカルまで数多くの作品に携わる。2001年に「ミスター・シンデレラ」を手がけて以降、オペラ作品の演出でも評価を受けている。

テノール 海道弘昭 (かいどうひろあき)

埼玉県出身。国立音楽大学卒業。日本オペラ協会・藤原歌劇団所属のテノール歌手として活躍。「海道弘昭30才の挑戦『太陽の歌』」などCDも発表しており、幅広い層にオペラを届ける活動に尽力している。

20年前に作られた物語が持つ、今を生きる人にも響く「普遍性」。

──「ミスター・シンデレラ」はどんな作品でしょう?

高木 三十過ぎの研究者の夫婦がおりまして、夫の方はミジンコの研究、妻の方は蜂の性ホルモンの研究をしております。そして、この夫婦関係を破綻させるような出来事が起きる。つまり夫が妻の研究の性ホルモンの薬を飲んで、女性化してしまうんですね。赤毛の女になってしまうんです。その女が、夫とまるっきり正反対で、とても妖艶な美人。そして、夫はその女に惹かれていく……これによって研究生活や家庭生活がめちゃくちゃになるというコメディタッチの作品です。

──今回2017年以来の再演ということで、ときを超えて愛されている作品なのですね?

高木 やはり普遍的な要素が入っているということですね。初演から20年以上経っても家庭の問題が注目を浴びているように思います。むしろ今の方が鮮明に浮かび上がってきているのではないのでしょうか。

海道 普遍的というテーマがとても大事なところで。見ている方にとっては、うちもそうだなとか、そこは私もそうだなとか思いながら見ていただけるストーリー展開になってます。どの年代の方が見ても面白いんじゃないかなと感じてますね。

性別も性格も正反対になってしまうトンデモ展開。

──主人公伊集院正男はどんな男性なのでしょう?

海道 オペラの中では髪はボサボサで、服はヨレヨレで、いわゆるズボラ夫。薫というお嫁さんがいるんですが、やっぱり頭が上がらず、両親にも頭が上がらない、内気なキャラクターとして描かれております。今風でいうとクラスでよくいる「陰キャラ」、「陽キャラ・陰キャラ」でいうと「陰キャ」なんですね。それがストーリーの中では女性に変身、しかも「陽キャ」になってしまう。性別だけでなく性格まで変わってしまうんです。正男はどんどんこの赤毛の女、変身した自分に魅力を感じてしまう。それが正男にとっての一番大事なところで。自分がどう生きていきたいのか。内気な、陰キャのままで良いのか。それとも変わった陽キャで生きていくのか、どうしたらいいかと悩みに突入していく訳なんですね。ここがキャラクターの設定としては面白いところかなと思ってます。

オペラのあらゆる技巧、さらにはほかの音楽も見どころ。

──「ミスター・シンデレラ」はほかにどんなところに注目して観れば良いでしょうか?

海道 音楽のことに関して話せば、もうオペラというジャンルでは測れないものになっていると思います。作曲の伊藤康英先生いわく、オペラを作曲するため全ての技巧を使って作られたそうです。またジャズであったりタンゴであったり、ボサノヴァであったり、今まで聞きうる大半の音楽の要素も詰め込まれています。そして見どころとしてはやはり、正男と薫の二人の言い合いの場面。このシーンだけはまさにグランドオペラ。その迫力に圧巻されるのではないかと思っています。

オペラは敷居が高いもの、とっても特別な体験なんです。

──オペラの魅力はずばりどこにあるでしょう?

高木 僕が書くオペラというのは、不思議なオペラというか、例えば女が男になり男が女になりという、ありえない話なんですね。ストレートプレイではちょっとできないことなんです。ところがオペラにする、音楽がそれに絡んでくると、やはり正当性というか成立させていける、そこは音楽の力だと思うんです。広がりがある、ということだと思うんです。

海道 去年、オリンピックでいろんな国の方々が同じ種目にトライする姿を見て大変感動したんですが、オペラってまさにこれなんですよね。全世界の人たちが同じオペラという種目を同じ言語で、同じ音楽技法で作っていく。どの国にも受け入れられているんです。またやはり「声」であるということ。今、携帯、スマホを見れば、なんでも手に入る時代になって、ショッピングもできるし、音楽が欲しかったらYouTubeを開けば見られる。けれどもオペラの魅力ってリアルなんですよね。実際に、劇場に座ってそこで歌っている人の声を聴く。このリアルな体験というのは、もうデジタルではどうしても作れない。本当に魅力的なコンテンツです。よくオペラって敷居が高いわね、なんていわれることが多いですけれども、いいんです、敷居が高くて。それだけ価値が高くて魅力的な体験。ミラノ・スカラ座や、メトロポリタン歌劇場でできる体験が、新宿で出来ます。東京でも、日本中でできます!

おしゃれをして観に行く、それがオペラを楽しむためのコツ。

──初めての人が楽しむコツはあるでしょうか?

海道 この作品は日本語で歌われるオペラですから、イタリアやドイツ、ロシアの作品とは違って聴きやすいですし、何も考えずにお越しいただいていいと思います。ただそれだけではなくて、ぜひ多くの方に、おしゃれをして来て頂けたらうれしいですね。オペラを一つのイベントとして、ぜひ皆さんに受け入れていただきたい。少しおしゃれをするとオペラへの気持ちも高まっていきます。初めて行く際には、それが一番の重要なポイントじゃないかなと思っています。

高木 ご家族みんなで楽しく見られるオペラですので、「ああ、これはこうだったね、ああだったね」とお話を持ち帰って頂ければと思っております。やっぱりオペラに限らず舞台芸術は映像より生で見た方がいい。立体感があって声も聴こえてきて、全身で感じられると思います。そういった感動というのが舞台にはあるんです。

素敵なフィナーレ! 家族みんなが笑顔になれる、幸せになれる作品です。

──お客様へのメッセージをお願いします

高木 美しくも悲しくも楽しいメロディで、家族の皆さんが笑顔になるオペラです。ぜひいらしてください。

海道 このコロナ禍で、大変な想いをされている方も多いと思います。我々、このオペラを通してそんな方々が、このオペラのフィナーレを見た後に幸せになれるような、そんな結末を準備しております。見にきた方は必ずや笑顔で帰れますので、多くの方にお聴き頂きたいと思います。どうぞお越し下さい。

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