落語家 春風亭昇太さんにインタビュー

第52回 都民寄席

生で見る落語は楽しさのレベルが違います。

落語の笑いは落語家と客席のお客様が一緒になってつくるもの、と話す春風亭昇太師匠。東京はあらゆる芸能を毎日のように楽しめる、世界でもまれな街だから、楽しまないのはもったいない、ぜひ生で見てほしいと熱く語ります。 第52回 都民寄席 江戸博公演 公演情報はこちら


春風亭 昇太(しゅんぷうていしょうた)

落語家、公益社団法人落語芸術協会会長。静岡県出身、東海大学卒。1982年に春風亭柳昇に入門、1992年真打昇進。NHK新人演芸コンクール優秀賞、花形演芸大賞金賞および大賞、第55回文化庁芸術祭(演芸部門)大賞など受賞多数。2016年より日本テレビ「笑点」大喜利の6代目司会者。俳優やミュージシャンとしても活躍するほか、趣味の「城めぐり」に関する著作や講演も行っている。

古典落語も落語家それぞれに違った魅力が。

──落語『二番煎じ』はどのような噺ですか?

江戸の冬の夜、町内の旦那衆が火の用心を触れて回るのですが、寒くてしかたがない。そこで番屋に戻って一杯引っかけて温まろうとするのですが、運悪く見つかってしまい…、という、私の好きな噺の一つです。古典落語の代表的な演題ですが、冬場にしかやらないので、季節を感じますね。私は新作落語だけというわけではなくて、古典と両方をやっています。


──古典落語のおもしろさとは?

落語家にとって、古典落語は必修科目、新作落語は選択科目なんです。落語はカテゴリーとしては演劇であって、演出と演技を全部一人でやっている。一人一人が劇団のようなものです。例えばシェイクスピアの作品だって、演じる劇団や演出家によって変わりますよね。僕たちも、古典落語という昔からあるものを演出を変えながらやっています。同じ演題でも、落語家それぞれに違った魅力があるんです。

お客様の様子を見ながら、話すネタやテンポを変える。

──演劇やコンサートは客席が暗くなりますが、落語は比較的明るいですね。

この都民寄席ではあらかじめ演題を決めていますが、多くの場合、落語家はネタを決めないで高座に上がるんですよ。その日のお客様の様子や、自分より前の出番の人はどんな噺をしたか、それがお客様がどのようにうけたかといったいろいろな状況を考え合わせて話すネタやテンポを変えるといった調整も、落語家の仕事の一部です。だから、お客様が見えるくらいの明るさにしてもらう落語家が多いですね。 僕はお客様が笑っていないと不安になるので、明るいほうが好きです。もっとも、明るいとうけていないときでもよく見えるので、諸刃の剣なんですが(笑)。

落語家は目の前のお客様に話している。

──落語を生で見る面白さとは?

落語やいろいろな芸術全般、それにスポーツも同様ですが、生で見るのとテレビの四角い画面で切り取ったものを見るのとでは全然違います。落語の場合、落語家は目の前のお客様に向かって話しているので、特にそうです。落語は落語家とお客様が一緒につくるものなので、お客様がいないとできない芸能なんです。

だから、生の落語を知らない人がテレビで見ても、あまり楽しくないかもしれない。なぜこんなことが言えるかというと、若い頃の僕がそうでしたから。生の落語を知らなかったので、着物を着たおじいさんがテレビでぼそぼそしゃべってる、こんなものがおもしろいわけはないとずっと思っていました。

落語に限らず、演劇でも音楽でも、やはり生の舞台は楽しさのレベルが全然違います。特に東京という街は、ありとあらゆる芸能を毎日のように見ることができるという世界でもまれなところじゃないですか。東京に暮らしていて、そういったものを楽しまないのは本当にもったいないと思いますので、だまされたと思って1回でいいから見に来てください。

人間は、大変なときほど笑いが必要。

──現代人にとって、「笑いの効用」って何でしょうか?

いまのような社会状況の下で、落語会などではお客様のうけがいいんですよ。たぶん、「笑い」を求めていらっしゃるのだと思います。
かつて「日本の喜劇王」と呼ばれたエノケン(榎本健一)に関する本に、「劇場が揺れるほどの笑いが起こった」とありました。戦争をはさんで日本中が大変な状況にあって、逆に「笑いたい」という人々の思いが強かったのかもしれません。
また、ある本には、笑う生き物は脳が大きいと書かれていました。人間は特に脳が大きくて、考えるべきことが山ほどある。それに対して、「笑い」には「脳のマッサージ」という効用があるので、大変なときほど笑いが必要だし、人は笑いを求めるのだと思います。

脳みそを清流で洗っているような爽快感。

──落語家として一番うれしいときは?

もちろん、お客様にうけたときですよね。新作なんかでお客様が腹を抱えて笑ってらっしゃるのを見ると、脳みそを清流でジャブジャブ洗っているような爽快感を覚えて、落語家はやめられないとつくづく思います。

私は決めていることがあって、「今日の出来は、まあよかった」と思ったときは電車で帰ります。「今日はけっこうよかったぞ」だったら途中まで電車で帰って、乗換駅からタクシー。「今日は完璧!」という日は、直接タクシーで帰るんです。

落語をはじめ、さまざまな舞台公演をお楽しみください。

──お客様にメッセージをお願いします。

都民芸術フェスティバルは、オーケストラ、オペラ、バレエ、演劇、寄席、伝統芸能などの11分野にわたるさまざまな舞台公演を、令和4年の1月から3月、都内の各ホールでお楽しみいただけます。
コロナ対策を万全に整えて実施いたしますので、都民芸術フェスティバルのホームページをチェックして、ぜひ足をお運びください。お待ちしています。

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