カール・ユーハイム役 財津優太郎さん
エリーゼ・ユーハイム役 上原りささんにインタビュー

イッツフォーリーズ公演ミュージカル「バウムクーヘンとヒロシマ」

戦争を描いた物語だからこそ伝えたい、人と人とのつながりの大切さ。

作曲家いずみたくが作った歴史ある劇団、イッツフォーリーズ。今回は第68回産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞した本『バウムクーヘンとヒロシマ』を原作としたミュージカルに挑戦します。主人公夫婦を演じる財津優太郎さん、上原りささんというフレッシュなお二人が、この作品にかける想い、舞台の面白さを話してくれました。

財津優太郎(ざいつ ゆうたろう)

2018年、劇団番町ボーイズ公演「壬生狼ヤングゼネレーション」、2021年、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」などの作品で舞台を経験。テレビやテレビコマーシャルにも出演している。今回が初のミュージカル挑戦となる。

上原りさ(うえはら りさ)

2012年から『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)で「パント!」のおねえさんを務め、全国各地で数多くのコンサートにも参加する。2020年には「はみがきジョーズ/ベイビーシャーク」で歌手デビュー。以後も音楽、演技と幅広い活躍を見せている。

バウムクーヘンを通して、戦争や歴史を学んでいく物語です。

──演目をご紹介ください

上原 このお話はバウムクーヘンが好きな一人の少年が、バウムクーヘンを通して歴史を知っていく物語です。自分のおじいちゃんの時代や、自分が今生きている世界の過去にこんなことがあったんだと、知っていくんですね。実際に戦争が起きている時代に大切なことを、今一度立ち返って考えられる作品だと感じています。戦争がいかにいろんな人の人生を狂わせたのか、日本にバウムクーヘンやほかの洋菓子がどうやって広まったのか、みんなが知らない、今の子どもたちもきっと知らない歴史を知ることができるお話です。

財津 上原さんがおっしゃったように、バウムクーヘンがすごく重要なキーになっています。颯太という少年が、バウムクーヘンを通していろいろなことを学んでいく、知っていくんです。それと、舞台上にも注目していただきたいですね。探してみたら、実はいろいろなところにバウムクーヘンが隠れているんですよ。客席から、バウムクーヘンを探すのもすごく楽しいだろうなと思っています。

強さと弱さを合わせ持つカール。彼を支え続けた女性、エリーゼ。

──お二人が演じられる役柄は?

財津 僕が演じるカール・ユーハイムという人物は実在した方で、日本で初めてバウムクーヘンを作りました。今も「ユーハイム」というお菓子の会社がありますがそのルーツとなった人ですね。実際に演じると、強い部分と弱い部分がある人だなと感じています。強い部分というのは、戦争で日本に連れてこられて捕虜として生活しながらも、バウムクーヘンに熱い想いを持ち続け、お菓子作りで人を笑顔にしたいという気持ちを一度も忘れなかったところ。強くてかっこよく、すごく魅力的だなと思っています。そして逆に難しく考えるあまりに、自分のバランスを崩してしまい、悩みを抱え込んでしまう。すごく弱い部分もあるんですね。強いけれど弱さもあるという、バランス。演じるのが難しいですけれど、今はこれらを意識しながら稽古に取り組んでいます。

上原 私が今回演じるエリーゼはカールの奥さんで、彼を支えることを大事に思っている女性です。カール亡き後も「ユーハイム」を盛り立てて、今の形に定着させたのが彼女だということを、原作の本を読んで初めて知りました。「ユーハイム」のバウムクーヘンもほかのお菓子も食べたことがありましたが、こんなに深い歴史があったということは知らなかったので、まずはそれにも驚きましたね。私は、カールのお菓子と出会って、幸せを感じた初めての人物はエリーゼではないかと思うんです。自分に幸せをくれたカールをずっと支えていこう。彼女はそういう気持ちを持って、戦争も乗り越えてきたんですね。強い信念を持ちながらカールを支えていくエリーゼを、しっかり体現したいなと思っています。彼らのおかげで今、現在を生きている私たちが幸せな気持ちをいただいているので、お二人の伝えたかったものを、自分たちも伝えられるよう、カンパニー一丸となってお稽古に励んでいきたいです。

知ってほしいのは、戦争のなかにも確かにあった生の営み。

──作品を通して伝えたいことは?

財津 観ていただいた方の頭に最初に浮かぶのはやはり戦争だと思うんです。カールが日本に連れてこられた戦争(第一次世界大戦)があって、その後、広島の物産陳列館に爆弾が落とされ原爆ドームとなった戦争(第二次世界大戦)があって……。ただ、戦争というのはあくまで一個の大きなテーマで、作品としては戦争の話だけにしてはダメというか、それで終わらせたくないなという想いもありました。カールが連れてこられた1915年にも、もちろん今の日本にも、これからにも、いろんな人が住んでいて、生活をしていて。そういう生の営みがつながったおかげで、今の僕たちがいるということを忘れたくないんです。戦争だけじゃなくてこれらの営みが続いて、そのなかでお菓子がたくさん食べられて、今の日本になっているんだという想いを大切にして、それを演技で表現できればと思っています。

上原 財津さんがおっしゃったように、このお話の根底に見えてくるのは戦争なんですね。今まで学校で習うのは日本側から見た歴史だったと思うんですけども、今回初めて、捕虜として連れてこられた外国人の目線で歴史を見ることになりました。見方が変わると、戦争の感じ方も変わるなという実感が強くありましたね。今現在も戦争が起きてしまっていますが、戦争によって奪われるものがあっても生まれるものは何もないということを、一つの気づきとして、この後の世代にも知っていてほしいと感じました。そして、今も「ユーハイム」というお菓子会社が残っているという事実は、戦争を越えて、当時のユーハイムの人たちと日本の人たちのつながりがあったおかげだと思っています。人と人とのつながりが何よりも大事で、何よりも尊いことなんだよと、作品を通して伝えていきたいなと思っています。

程よいプレッシャーと、良い緊張感のなかで。

──歴史ある劇団、イッツフォーリーズでお芝居してみていかがですか?

上原 本当にみなさんが温かくて、お稽古場の雰囲気がものすごく良く、和気あいあいとしていますね。同時にみんなが一丸となって一つの方向に向いて走っているとも感じています。劇団の一員として稽古場にいられることが今は本当に幸せで、良い劇団だなと感じています。

財津 優しくて、歌も踊りも演技も素敵で、みんなかっこいいですよね。僕と颯太役の森山真衣さんという役者さんが最年少ですが、本当に先輩方から良くしてもらっています。今回、僕はミュージカル初挑戦なのですが、初めてがこの作品で良かったと強く思っていますし、だからこそ素敵な作品にしたいです。みんなにこの熱量をうまく届けなければというプレッシャーを感じながらも、とても良い緊張感の中で稽古ができていますね。

舞台を見たお客様が、それぞれ別の感情を持っていいんです。

──舞台の魅力とは?

財津 舞台は僕も観客として観るのも大好きですし、舞台に立たせていただくことも大好きです。やはり、お客さん一人一人が自由な感想を持っていいというか。どんな作品であっても観た人それぞれが、感じることって絶対違うと思っていて、それがとても素敵なことだなとも感じています。そして、それが誰かに刺激を与えることになったら素敵なことだし、僕らが作った作品を毎日の彩りにしてもらえるというのは、舞台芸術の良さなんじゃないのかなと思います。

上原 私はもともと子供番組出身なので、ミュージカルは、これまでとは立ち方が少し変わった印象になるんですね。でも、第一にお客様に楽しんでいただきたいという想いはまったく変わっていません。また、観てくださったお客様の感性それぞれで変わってくると思うんですけれども、何か一つでも、「このことが気になったから家に帰って調べてみようかな」とか、「私の人生でこれをもうちょっと調べてみたい」とか。舞台を、そういう欲求にもつなげていただけるとうれしいなと思っています。

──お客様へメッセージをお願いします

皆さん、バウムクーヘンは好きですか?ミュージカル「バウムクーヘンとヒロシマ」。見たら絶対にバウムクーヘンが食べたくなります。ミュージカルが初めての方も、ミュージカル大ファンの方も楽しんでいただける内容となっていると思います。ぜひ見に来てください。お待ちしています!



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