日本オペラ協会 岡 昭宏さんにインタビュー

日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズNo.84「源氏物語」新制作

人間の声が出せる最大のパフォーマンスを日本のオペラで感じてほしいです。

オペラを介することで、日本の和の様式美がよりはっきりと表現される。コンサート、舞台に大忙しの人気バリトン歌手である岡 昭宏さんは日本のオペラの魅力をそのように話しています。ここでは、今回が日本語版オペラ全幕世界初演となる「源氏物語」への想い、オペラの魅力を余すところなく語っていただきます。

岡 昭宏(おか あきひろ)

国立音楽大学声楽科卒業。東京芸術大学大学院声楽専攻修士課程修了。新国立劇場オペラ研修所第10期生修了。平成22年度、文化庁新進芸術家海外研修制度研修生としてイタリア・ジェノヴァへの留学を経験する。

キャラクターを色濃く演出する舞台、オペラの入り口としてもぴったり。

──演目をご紹介ください

紫式部原作の「源氏物語」。これは三木稔さんが作曲されて、コリン・グレアムさんという方が台本を書かれたんですけれども、三木稔さんが日本語に訳されて、それを全幕世界初演という形で演奏させていただきます。

──日本語版は今回が世界初なのですね

もともとセントルイス・オペラ劇場の総監督だったコリン・グレアムさんがぜひこの「源氏物語」をオペラにしたいということで、まずアメリカで、英語版が上演されました。英語版はその後、日本での上演もあったんですが、満を持して、日本語訳での上演が実現しました。源氏物語というと54帖からなる長編の物語ですが、ギュッとかいつまんだ作品となっています。ただその分、出てくるキャラクターはそれぞれとても色濃く描かれています。三木稔さんの手法である「ID(アイディー)セリー」(各キャラクターを特徴づけるメロディを活用する)も印象的ですね。キャラクターにそれぞれのメロディを当てることによって、お客様にも役柄が伝わりやすいんです。このメロディーが流れてきたから、源氏の気持ちが入っているなとか、このメロディだから、陽気な頭中将の登場だなという感じですね。お客様にとっても、とても分かりやすいオペラになっていると思います。

「世界初演」というプレッシャーはあるが、後世に残るものにしたいです。

──日本の作品がオペラでどのようにアレンジされるのでしょう?

オペラはそもそも西洋のものですよね。それを日本のものと融合させるうえで、やっぱり大事になってくるところが、日本の楽器だと思うんです。今回もたくさんの日本の楽器が出てきます。たとえば竜笛だったり、琴だったり、二十絃箏だったり、あとは琵琶だったり。そういう楽器が西洋のものとコラボレーションすることによって、見事に日本の和の様式美みたいなものが表現されているところが、今回のオペラの魅力だと思いますね。
また日舞、踊りは我々が生身でやるので、そこは日本人としてのプライドを持ってしっかり務めたいなと思っています。今回は日本舞踊と歌舞伎をミックスさせたような踊りになっていて、舞や殺陣のシーンも見どころです。

──岡さんが演じられる光源氏はどういった役柄でしょうか?

作品のなかで「この世では完璧すぎる」というセリフがたくさん出てくるんですね。光源氏はまさにそういう役。教養が高くて品位もあって、何でもできるから光源氏は女性からも人気がある。それに加えて、女性の痛みというのを同じ目線で感じられる。男性が女性よりも強い時代に、社交辞令じゃなく真摯に女性の痛みに向き合える。こういったところが、光源氏が女性から人気がある一つのポイントなのかなと思いながら今、役を作っています。
今回はとくに「世界初演」。我々歌手にとってはすごく背筋が伸びるもので、そのプレッシャーは常にあるし、初演はお客様の印象にも残るものです。後世に残る公演にしたいなと思っています。

日本のオペラを通して、日本人の心の根底に流れるものを広めたい。

──日本オペラ協会とは?

まず、日本オペラ振興会というのが母体としてあって、その中で2つの団体に分かれています。両方に所属している歌手も多いのですが、藤原歌劇団は西洋のオペラを、日本オペラ協会は日本のオペラを専門に上演しています。日本のオペラには、童謡や今回のように古典文学を元にしたものなどがあるんです。オペラを通して、日本人の心の根底にあるものがどんどん日本人に周知されていく、この活動というのはすごく有益なものだと思っています。僕がイタリアに留学していたときに、そのことを痛感しました。日本人の強みとして日本のオペラをどんどんやっていきたいです。また、日本のオペラは、あえてすべてを語らずお客様の想像力に委ねるところがある。日本の「侘び寂び」といいますか、情緒といいますか。それが、日本の作品の魅力なのかなと思います。

気になったクラシックやオペラの音楽を、調べていくだけで十分です。

──オペラを初めて観る人が楽しむコツは?

実は皆さんもうオペラには触れられてるんですよ。テレビだったり、今だったらYouTube、インターネットメディアだったり。ああいう場所に切り抜かれて、いろんなクラシック、オペラの音楽というものは盛り込まれているんですね。気になった音楽があれば一度調べてもらって、オペラを一度観に行っていただく。オペラの劇場に行くと、その音楽はやっぱり流れるんですね。それだけでも楽しめると思います。僕も実際そういう体験をしました。「カルメン」の序曲がすごく印象的で、自分で調べていたんです。たまたまなんですが、両親にオペラに連れてってもらって観ることになった作品が「カルメン」で、ものすごく感動した記憶がありますね。そんなきっかけもあり、この道に進んだという経緯もあります。また、今回は「源氏物語」ということで、マンガなど、わかりやすく要約されているものもたくさんあるし、まずは慣れ親しんでもらうのが一番じゃないかな。恋や勢力争いだったり、普遍的なことが書かれているので実は、すごくわかりやすい話なんですよ。

オペラ歌手として探求し続けている、人間の声の魅力。

──生で観るオペラの魅力は?

マイクなしで1000人、2000人のホールで、声を一番後ろの席まで届かせるということが仕事なので、やはりそこにはこだわりたいです。また、オペラには長くなると5時間6時間もの大作もあります。その間、枯れることなくしっかりと声を届けていく、歌い続けていく……そういう発声の技術を我々は常に追求しているので、人間の持っている声の魅力だったり、人間の声が出せる最大のパフォーマンスを観ていただけると、オペラの内容+αで楽しんでいただけるのかな、と思っています。

──お客様へメッセージをお願いします

2023年2月18日、19日に日本オペラ協会は「源氏物語」をお届けいたします。(会場は)Bunkamuraオーチャードホールです。温故知新、これを機に、古きを訪れるのはいかがでしょうか?皆さんのお越しをお待ちしております。



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