演出・振付 鈴木 稔さん・音楽 蓜島邦明さんにインタビュー

スターダンサーズ・バレエ団公演 「MISSING LINK」

世界と自分をつなぐ「リンク」を感じ取る、斬新で楽しいモダンバレエ。

幅広いバレエ作品の演出・振付を手掛けている鈴木稔さんと、映画やテレビドラマ、ゲームなど多彩なジャンルの楽曲制作で知られる蓜島邦明さんのコラボレーションによるモダンバレエ。踊りと音楽による斬新で楽しいステージは、観客一人一人の世界の見方を変える可能性と刺激に満ちています。

鈴木 稔(すずき みのる)

振付家。東京都出身。国内および米国のチェンバー・バレエ団、コロラド・バレエで多くの公演に出演。帰国後は振付家としての活動も開始。文化庁在外研修員としてフランクフルト・バレエ団にて研鑽を積む。日本バレエ協会振付奨励賞、音楽舞踊新聞村松賞、芸術選奨文部大臣新人賞など受賞多数。

蓜島邦明(はいしま くにあき)

作曲家。埼玉県出身。テレビドラマ「世にも奇妙な物語」や映画「スプリガン」、ゲームソフト「クーロンズゲート」を始め、CM、アニメ、バレエなど、幅広いジャンルの音楽を手掛け、数千曲の楽曲を提供。映画「蟲師」で第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀映画音楽賞を受賞。

モダンバレエの新作、第1部は生演奏も。

──「MISSING LINK」はどんな作品?

鈴木 白鳥の湖やくるみ割り人形といった古典バレエではなく、モダンとかコンテンポラリーと呼ばれるカテゴリーの作品です。明確なストーリーやキャラクターがあった上で成り立っているものではなく、あくまでもバレエによる創作であり、アブストラクト(抽象的な作品)ともいえます。

第1部は新作で、第2部は二十数年前に初演の「Degi Meta go-go」をバージョンアップしたものです。いずれも音楽は蓜島邦明さんにお願いし、蓜島さんとヴァイオリニストの高木和弘さんによる生演奏もあります。

普段あまり意識しないものを感じ取ってほしい。

──タイトルの「MISSING LINK」とは?

鈴木 「MISSING LINK」(失われたつながり)には、いろいろな意味が込められています。本来は、生物の進化の過程で失われてしまった輪の一部。と言われても、分かりませんよね(笑)。進化の道筋は化石などでたどることができますが、化石が出ていないものについては、つながりがはっきりと見えない。転じて、リンクが途切れてしまった状態ですね。また、オートバイのチェーンが切れたときに輪をつなぐ部品も、ミッシングリンクといいます。

作品を創っていく中で、皆さんに見せたいものや、ちょっと努力して見ていただきたいもの、見逃したもの、実は隠されているものなどがたくさんあると思うようになりました。それらは、まるで発見されていない化石のような証拠として残っており、それを観客の皆さんに見つけてほしいというのがこの作品のねらいです。

違う言い方をすると、われわれを取り巻く外的宇宙と体の中の内的宇宙があり、その境界線にあって両方をつないで(リンクさせて)いるのが肉体ではないでしょうか。普段はあまり意識しない、肉体という境界線を感じ取っていただくのに一番適しているのは何かというと、ダンスです。ダンスの中のバレエという技法を使った「MISSING LINK」を、ぜひ観ていただきたいと思っています。

第1部はディスコ、60年代のソウルミュージックの雰囲気。

──音楽についてお聞かせください

蓜島 第2部の「Degi Meta go-go」の音楽はノイズミュージックというジャンルのもので、いまでこそハリウッド映画でも普通に使われていますが、作曲した二十数年前の時点ではそうとう早かった。時代がようやく追いついた感じです。
では、新作である第1部の音楽はというと、鈴木さんの要求はディスコなんですよ。バレエ団がディスコをやる! 私は、革新的で非常に面白いと思いました。しかも、60年代のソウルミュージックの雰囲気ということなので、音楽で一つのカオス状態を作ろうと思っています。
第1部の音楽は、とても分かりやすくて楽しめるものになります。しかし、お祭り騒ぎに終始しては作品の本質が表現できないので、生演奏が入ってくる。期待していただきたいですね。

鈴木 私はディスコやソウルミュージックの影響を受けて育った年代です。そして、実はここに一番のミッシングリンクがあると思っています。
バレエって古典だから古いと思われがちですが、本当は、常に最先端のものを取り入れてきました。例えば20世紀の初め頃には、詩人のコクトーが台本を書いてサティが作曲し、ピカソが舞台装置を作ったバレエが上演されたり。
だから今回も、バレエにほとんどなじみのない方でも、例えば蓜島さんが作ったゲームや映画の音楽が大好きなので「MISSING LINK」を観に来て、こんな世界があるんだと驚く。未知のものと出合って自分とのつながりが生まれるということは、ミッシングリンクを埋める作業だと思います。そこから、観た人それぞれにいろいろな世界を広げていってほしいという願いも込めて、このタイトルにしました。

単純に、観て面白い。能動的に観れば、奥が深い。

──「MISSING LINK」の見どころは?

鈴木 改めて、「バレエダンサーって、格好いいぞ」というところを一番観てほしいですね。
いろいろお話ししましたが、単純に、観て面白い作品になっています。さらに、能動的に観ようとすれば、もっと多くのものが観えてくるはずです。
「なんか踊りをやってるみたいだけど、ちょっと観てみようかな」と、気軽に劇場に足を運ぶ。それが、自分にとってのミッシングリンクを発掘するきっかけになるのではないでしょうか。

蓜島 バレエダンサーのすごさは、観れば分かると思います。子どもの頃から厳しいレッスンを続けてきて、指の先まで使って全身で表現する。そんなことも意識しながら観ることによって、奥の深い世界を楽しめるようになります。

バレエを観たことがない人も楽しめる作品。

──お客様へメッセージをお願いします

鈴木 「MISSING LINK」は、決して敷居の高いバレエではありません。どなたでもお楽しみいただける作品になっています。また、お求めやすい学生券もありますので、ぜひおいでください。

蓜島 今回はディスコです。その楽しさったらないと思います。しかもミッシングリンクという、いわば輪廻転生、つながりと繰り返し、カオスの世界。最後がどうなるか、これも楽しみにしてください。いままでバレエを観たことがない人も、ぜひご来場いただきたい。よろしくお願いします。



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