オペラ歌手 トゥーランドット姫役 田崎尚美さん・王子カラフ役 城 宏憲さんにインタビュー

東京二期会オペラ劇場 『トゥーランドット』新制作

世界で最先端の大スペクタクルなオペラを、東京でお楽しみください。

スイス・ジュネーヴ大劇場で上演されて大好評を博した、ダニエル・クレーマー演出の『トゥーランドット』〈新制作〉を東京二期会が上演。アート集団チームラボによる、舞台美術の枠を超えた没入的なオペラ空間で繰り広げられる最先端のオペラは、初めてオペラを見る人も熱心なオペラファンも、きっと夢中にさせることでしょう。トゥーランドット姫を演じる田崎尚美さんと、王子カラフ役の城 宏憲さんにお話をうかがいました。

田崎尚美(たさき なおみ)

東京藝術大学卒業、同大学院修了。東京二期会では『サロメ』題名役、『タンホイザー』エリーザベト、『パルジファル』クンドリ等、数多くのオペラに主演。日生劇場『ルサルカ』題名役やびわ湖ホール『ワルキューレ』ジークリンデ、新国立劇場デビューとなった『さまよえるオランダ人』ゼンタ、東京・春・音楽祭での「子どものためのワーグナー」シリーズ等への出演も高く評価され、当役はグランドオペラ共同制作でも演じている。二期会会員。

城 宏憲(じょう ひろのり)

東京藝術大学卒業、新国立劇場オペラ研修所修了。第84回日本音楽コンクール声楽部門第1位、第8回静岡国際オペラコンクール三浦環特別賞。文化庁新進芸術家海外研修制度にて渡伊。帰国後、東京二期会やグランドオペラ共同制作、日生劇場でプリモテノールを務める。近年の主な活動には、東京・春・音楽祭でのムーティとの共演や、新国立劇場『さまよえるオランダ人』エリックが挙げられる。今秋、東京二期会『ドン・カルロ』題名役で出演予定。二期会会員。

実はヒロインが二人登場するという珍しいオペラ。

──『トゥーランドット』はどんな作品?

田崎 古代の中国を舞台にしたプッチーニ最後の作品ですが、プッチーニは最後まで仕上げることができずに亡くなりました。今回は、イタリアの作曲家であるルチアーノ・ベリオが結末を書いたものを上演します。美しいトゥーランドット姫は、次々と現れる求婚者に三つの謎を出し、解けなければ死刑にしていました。国を追われて放浪中のカラフ王子も、姫に一目惚れして求婚し…、というお話です。実は、タイトルのトゥーランドット姫以外にもうひとりのヒロインが登場するという、オペラでは珍しい作品といえるでしょう。

『トゥーランドット』の3幕には、オペラファンなら必ず一度は耳にしたことがあるはずの「誰も寝てはならぬ」という有名な曲があります。そしてその後の結末がどうなるかというと、それは観てのお楽しみです(笑)。

演出家から、あなたは王子ではないと言われて驚いた。

──役について教えてください

 今回の演出はダニエル・クレーマーという鬼才ですが、演出家は、その権限においてストーリーやバックボーンを変えることができます。私はカラフ王子を演じますが、彼に言われて驚いたのは、あなたは王子ではないと。普通の人間が姫という絶対的な存在に出会い、対等ではない二人をどうやってハッピーエンドに持っていくか。役作りでは、そこを探究していきたいと考えています。

カラフ王子の第3幕のアリア「誰も寝てはならぬ」は、最後にイタリア語で「vincerò」と高らかに宣言します。英語なら「I will win」、まるで自分自身を鼓舞する応援歌のようです。たとえ姫に結婚を拒まれても、自らの命をかけて姫にチャンスを与えるカラフ王子。「愛か死か」全ての運命を一つの謎に託す男のストーリーを、じっくりと受け止めていきたいですね。

田崎 演出家の考えはよく分かるし、それを体現するのがわれわれ歌手の使命だと思います。トゥーランドット姫は氷のような冷たい性格ですが、実は彼女にも心に傷を負った過去があってそうなったという人間的な面まで表現したいと考えています。
そういう意味では、インパクトのある舞台装置も含めて、もちろん初めて観るお客様には十分に堪能していただけるし、前に見たことがあるというオペラファンにも、こんなトゥーランドットがあるのか、トゥーランドット姫をこんな風に描くのかと、演出の意図を想像しながら楽しんでいただけるのではないかと思います。

皆さんのイメージを超えた、最先端のオペラを見ることができる。

──『トゥーランドット』の見どころは?

田崎 チームラボによる舞台装置は本当に豪華で、また出演者やスタッフも多く、たくさんの方のものすごいエネルギーが詰まった舞台になると思います。チームラボは国際的に評価の高いアート集団ですが、私は以前からファンで、イベントなどにも行っていました。今回は舞台上をレーザーが飛び交い、そこに出演者の歌声やオーケストラの生の音が一緒になって、これまで観たことがないような大スペクタクルな感じになるので、若い方にもぜひ観ていただきたいですね。


 『トゥーランドット』は有名な作品ですが、今回は皆さんがイメージしているトゥーランドットではないと断言します(笑)。
初演から100年近く経っており、そのつど新しい試みで味付けされて上演されてきました。この『トゥーランドット』は「新制作」ということで、スイス・ジュネーヴ大劇場で上演されたばかりの最先端のオペラ、最先端の舞台芸術を東京で見ることができる、それがこのプロダクションの一番の魅力だと思います。

特に新しい試みとして、LEDやレーザー光を使って舞台上の装置よりも大きなものを描こうとしたり、それに対してわれわれは、人間にしかできない身体表現を追求する。演出家からは、あなたの手の5センチの動きが、何千人も入ったお客様には分かると言われました。そうした細かい演技のクオリティを追求している最中です。

生の舞台を観ることによって、さまざまな感情が芽生える。

──どんな方に観ていただきたいですか?

 オペラファンはもちろんですが、この公演のチケットはお求めやすい学生席もあるので、若い方にもぜひ楽しんでいただきたいですね。これはお姫様と王子の愛憎劇であるだけでなく、スペクタクルな舞台装置や、いかにも男性的なダンサーたちが踊ったりと、演出家がいろいろなことを舞台で表現しています。そこに隠された意味が、生の舞台を見ることによって分かり、さまざまな感情が芽生えるでしょう。そういう影響を与えるということに対して、演じるわれわれ大人の側は責任を持って身体表現をしていかなくてはならないと自覚しつつ、このストーリーを伝えていこうと考えています。

手軽に動画を楽しめる時代だからこそ、ぜひご来場ください。

──お客様へメッセージをお願いします

田崎 これまでとはちょっと違ったトゥーランドット姫を観ていただければと思っていますので、ぜひおいでください。お待ちしています。

 いまはスマートフォンやパソコンで手軽に動画を楽しむことができる時代ですが、生の舞台を見て感じること、考えることはたくさんあるし、この舞台は東京文化会館でしか観ることができません。ぜひ、ご来場ください。



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