プロデューサー 水嶋カンナさん・演出家 金守珍さんにインタビュー

Project Nyx つかこうへい2作品連続上演
第25回公演「初級革命講座 飛龍伝」 第26回公演「ストリッパー物語」

人の心を動かす生の舞台。今の時代だからこそ、つかこうへいの原点を届けたい。

女性の魅力を際立たせ、エンタメ感の高い舞台に定評のあるProject Nyx。今回は演劇界のレジェンド、つかこうへいの2作品に挑戦します。プロデューサー、女優の水嶋さんと紀伊國屋演劇賞を受賞したばかりの演出家、金守珍さんに、作品の魅力、演劇の楽しさを熱く語っていただきました。

水嶋カンナ(みずしま かんな)

青年座研究所を卒業し、1994年『青き美しきアジア』より新宿梁山泊に参加。数々の唐十郎作品に出演する。2006年に、Project Nyxを立ち上げ、プロデューサー兼女優として印象的な芝居を世に送り出し続けている。

金守珍(きむすじん)

蜷川スタジオを経て、唐十郎主宰「状況劇場」で役者として活躍。「新宿梁山泊」を創立し、旗揚げより演出を手掛ける。2022年、新宿梁山泊公演『下谷万年町物語』、Project Nyx公演『青ひげ公の城』の演出で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。

伝説的なつか作品をProject Nyx流で楽しんでほしい。

──演目をご紹介ください

水嶋 Project Nyxでは以前、つかこうへい作品『売春捜査官』を上演しまして、評判が良かったんです。それで今回『ストリッパー物語』、『初級革命講座 飛龍伝』の2作品を上演することになりました。『ストリッパー物語』は明美さんというストリッパーとシゲさんというヒモが、辛い状況の中で虐げられながらも強く明るく楽しく笑って生きていくという感動的なお話になっております。『初級革命講座 飛龍伝』は、『飛龍伝』というタイトルですごく有名なつかこうへいさんのお話なんですけれども、皆さんのご存知の『飛龍伝』とはちょっと違ってまして、熊田留吉という全共闘の党首の運動家と機動隊員の山崎、留吉の息子の嫁で今回私が演じる愛子の3人が主軸の物語です。Project Nyxは歌や踊りなどいろいろ入れてエンターテイメントに仕上げることをウリにしておりますので、歌と踊りと殺陣がふんだんに入るような作品になっております。

つかこうへいの原点回帰、若者にも伝えたい想い。

──作品の見どころを教えてください

水嶋 つかさんの作品は同じ戯曲でもさまざまな台本があるんです。『ストリッパー物語』も4つとか5つ位の台本を読ませていただいて、そこから組み合わせながらProject Nyxなりに作っています。また社会の底辺に生きるしかなかった境遇の主人公2人が愛し合って励ましあう……絆の深い愛が描かれている作品だと思っています。つかこうへいさんの作品は、私もこれで(プロデュースするのが)3本目なんですけれども、逆説がすごく素敵でかっこよくて。罵りながら愛しているよって言うそのセリフがたまらないですね。やってる側としてもそうですし、聞いてる側も「これだよこれだよ、つかさんのつか節」となると思います。


 つかこうへいは若い世代含め、いまだに人気があります。でも、あまりにも作品が変容してしまっていた。たとえば『飛龍伝』は女優のショーのようなバージョンもあるんです。本来この話は革命でジュラルミンの盾を貫く石と、それを磨く職人の話なんですよ。その原点に僕は戻って、つかさんが風間杜夫、三浦洋一と「口立て」(脚本を作らず、その場でセリフを与えるつか特有の手法)で作っていた頃に戻したいと思います。つかこうへいさんがなんで演劇を志して、なぜ作家となったかを、原点を探るための作品として、あえて僕はこの2本に挑戦しています。ですから、これこそ、つかこうへいだという自信があります。

──金さんは以前もつかさんの作品を演出されたことあるそうですね

 一度、『童話版 飛龍伝』という舞台も演出させていただいたのですが、つかさんの本当に心臓ですね。ロマンチックでポエティカル。今回もつかこうへい作品初期の「モアパッション・モアエモーション」という、つかさんご自身の精神にたどり着きたいです。つかさんって新劇なのかアングラなのかアニメーションなのか、ジャンルがどこにあるのかわからないですけど、それをアングラチックに我々が「誤読」というか、解釈を誤読しながらこうじゃないか、ああじゃないかという本質に辿り着きたいなと。僕なりの試みをぜひ若い人たちに届けたいなと思っております。たとえば今回の『飛龍伝』は底辺の人たちの生き様と息吹の中から共有しあえる何か、許し合える、救える何か。それを見事に再生する力を持った作品なんですね。つかさんも僕も韓国にルーツがありますが、許し合うという儒教の教えみたいなものが根底にあるのかな。許し合う……それは大変素晴らしいつかこうへいの世界です。戦争の足音が聞こえるこんな時代だからこそ、どうやったら許し合えるのかはこれからの平和のためのテーマだとも思います。

女性の美しさをアピールし続ける、華麗で煌びやかなショー。

──Project Nyxはどのような活動をされていますか?

水嶋 2006年に旗揚げしました。1番最初はイラストレーターの宇野亞喜良さんと金守珍と私の3人で始めたんです。美女劇という、男性の役も女性が全部やるというアンダーグラウンド宝塚みたいなこともやったり、ほかにも歌舞伎町の女子プロリングの上で舞台をやるとか、女優だけで歌舞伎をやるといった試みもご好評をいただきました。今回もProject Nyxらしく華麗なレビュー、殺陣など女性の美しさをアピールするようなショーをふんだんに取り入れるようにと思っています。

時代を映す鏡である演劇、生だからこそ跳ね返ってくるものがある。

──演劇を生で見る面白さとは?

水嶋 コロナで演劇ができない期間があったことで、生で演じられることの喜びを感じています。お客さんとキャストとスタッフが同じ空気の中で同じ気持ちを持って笑ったり、泣いたり、感動したり、心が動いてウルウルする。お客様と一緒の空気で感じ合うってスゴいことなのだとつくづく思っています。お客さんの笑い声とか真剣な顔とか舞台からも見えるので。楽しんでくれているって思う、その瞬間が本当にとっても幸せです。

 映像は加工できますけど、ライブはそこに行かないと見られない。演劇はよく時代の鏡といわれますが、それは映像では見えないものだとも思っています。たとえ10人の観客しかいなくても、自分にとっては跳ね返ってくるものがいっぱいあるんですよ。

──金さんは新宿梁山泊でもご活躍で、昨年、紀伊國屋演劇賞個人賞も受賞されました

 「新宿梁山泊」は劇団とつけてないんですよ、役者たちが帰る家で修行の場。豪傑が集う、いや豪傑を気取るものの集まりなんです。いろんなメンバーたちが出て行っては戻ってくる。そんな場所を守っているというのはうれしいですね。なので劇団でなく、そういう「集団」なんです。今後もたくさんの予定が決まっていて、これからはもっともっと演劇界を歌舞いていきたいなと思っています(笑)。

笑って泣ける「リアル」な舞台に触れてほしいです。

──お客様へメッセージをお願いします

水嶋 Project Nyxの「初級革命講座 飛龍伝」「ストリッパー物語」は2作品とも、つかこうへいさんの熱く情熱たぎる作品を、Project Nyxならではの華麗なショーを織り交ぜて、笑って泣けて感動できる作品に仕上げております。若者のアンダー25のチケット、また2作品特別割引チケットのほうもご用意がございますので、ぜひご覧になっていただけたらと思います。お待ちしております。

 このたび演出を受け持つ金守珍と申します。皆さんぜひ劇場へ足を運んでください。ディズニーランドは映像で見ても面白くないのはそこに行って初めてそのリアルなものに接することができるからです。舞台は、映画テレビとは違う、そこにある、そこにしかないものが皆さん感じ取れると思いますので、ぜひ足を運んで、今の時代の息吹を感じ取ってください。お待ちしております。よろしくお願いします。



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