劇団唐組の皆さんにインタビュー

唐組若手公演・第70回公演『赤い靴』

演劇を観るというより、役者と一緒に物語を体験する楽しさ。

独特の魅力を放ち続けてきた唐十郎の世界が、フレッシュにパワーアップ。唐組の若手俳優たちがここぞとばかりに全力で演じる舞台を、いつもの紅テントから劇場に場所を変えてお届けします。スタッフの方々からは、役者と一緒に謎解きに巻き込まれていくような舞台をぜひお楽しみくださいという熱いメッセージが寄せられました。

久保井研(くぼい けん)

俳優、演出家。福岡県出身。1989年に劇団唐組入団、2015年から座長代行。「赤い靴」の監修を担当。

加藤野奈(かとう のな)

俳優、演出家。岐阜県出身。2018年に劇団唐組入団。「赤い靴」の演出および出演。

福原由加里(ふくはら ゆかり)

俳優。北海道出身。2017年に劇団唐組入団。

大鶴美仁音(おおつる みにおん)

俳優。東京都出身。2019年に劇団唐組入団。

若い女性二人組による誘拐事件が、2年後に動き出す。

──「赤い靴」はどんな作品?

久保井 1990年代に、若い女性の二人組が行き当たりばったりに少女を誘拐し、逮捕されるという事件が起きました。これを元にして、アンデルセンの童話「赤い靴」を翻案すると面白い作品になるのではないかと考えた座長の唐十郎が作ったものです。

タイトルにある赤い靴が事件の中で大きな意味を持ってきますが、登場人物それぞれにいろいろな過去を持たせて、バブル崩壊から30年たっても経済のことだけに目の色を変えている現代の日本人に警鐘を鳴らす、そんな意味合いを込めた作品になっています。
実際のストーリーは誘拐事件をそのまま伝えるのではなく、事件の2年後に物語が再び動き出すという構成です。

観客も巻き込まれていくような舞台にしたい。

──演出面の難しさや面白さは?

加藤 たくさんの登場人物がそれぞれに背負っているものがあり、それが絡まり合いながら謎解きをしていきます。それをお客様に分かるようにしながら次の謎に移っていくという展開をどう見せるか。最後にどのような絵になって、お客様に届くのか。そのへんの難しさに向き合って、日々台本を枕にして(笑)、みんなの意見も聞きながら試行錯誤しています。

久保井さんからは、「唐十郎の台本は、字面に引っ張られるな」とよく言われます。シンプルな会話のように見えて、実はその奥にあるものを読み解いていかないと面白くならない。基本的なストーリーは謎解きではなく、謎を解いていく人間たちを見せるということだと思っています。そこに観客も巻き込まれていくような舞台にしたいですね。

チャンスを与えられた人間が自らを鼓舞する姿。

──劇団唐組の若手公演とは?

久保井 私は唐組に30年以上いますが、数年前から若いメンバーが増えて、劇団員の層がとても厚くなりました。そこで、春と秋の定期公演以外に、若手が主体となって演じる機会を作ろうと、この若手公演を始めました。

加藤 いま、若い劇団員は先輩たちの高いレベルに追いつこうと懸命に稽古をしています。柔らかい発想で、必死になって「唐組の若手は他とは違うんだ」とアピールしてほしいし、お客様には、そんな彼らの姿をぜひ見ていただきたいと思っています。

久保井 あまりチャンスがなかった人間が、それを与えられて、自分をどう鼓舞するか。若いなりに、唐十郎の世界をお客様の目の前に広げて見せようとする。うまい下手を超えて、何かに真剣に取り組んでいる、そんな瞬間に出合っていただきたい。演劇を観るというよりも、一緒になって物語を体験するつもりで来場されると、ちょっと違った見方が楽しめるのではないでしょうか。

いろいろな思いがちりばめられた、先の読めない展開。

──役について教えてください

福原 犯人の弁護士の役を演じます。堅くてまじめな人物なのですが、一方でユーモアの感覚もある。彼女がなぜそこまでして事件の真相を追うのか、その深い部分まで見えてくるようにしたいと思っています。
「赤い靴」は、メインのエピソード以外の物語がとても多く、私は群像劇のような印象も持ちました。若い登場人物それぞれの思いがちりばめられて、お話が進んでいきます。


大鶴 私が演じるのは、小学5年生の時に誘拐された少女が2年たって、中学1年生になった姿です。誘拐されたときの気持ちや誘拐犯と交わした約束を2年間忘れず、どんなふうに成長したのか。どうやって事件と向き合うのか。少女から大人への階段を登る狭間に、とてつもない時間を経験したのではないかと思わせる展開です。

福原 第1幕の舞台は接見室です。犯人の一人は2年間、事件について口を閉ざしていたのですが、あるきっかけによって事態が動き出す。いろいろな人物がつながっていって、先の読めないストーリー展開です。

唐作品には分かる分からないを超えた面白さがある。

──子ども券や学生券、親子割引のチケットがありますが、子どもでも楽しめますか?

久保井 いまはお子様連れや20代、30代のお客様が多く、3世代そろってという客様も見かけました。客席のお子さんの反応がいいんですよ。ケラケラ笑ってる。子ども向けに作られた内容ではありませんが、逆に子どものほうで面白いところを見つけるようです。芝居自体が、そういう面白さのポテンシャルを持っているのかもしれません。

加藤 分からなくても面白いものって、あると思います。私自身、唐組の演劇が面白いけど分からなかった。だから、全部分かりたいと思って入団しました。唐十郎の作品は、分かっても面白いし分からなくても面白い。だから、子どもが見ても面白い。分かる分からないを超えた面白さが、唐の作品にはあると思います。

大鶴 劇団唐組では、役者と裏方の区別なく、すべてを自分たちで手がけます。今回は大道具や小道具も手作り感満載の絵本のような舞台になりそうなので、芝居を生で観るのは初めてというお客様やお子様にも、いろいろな視点で楽しんでいただけるのではないでしょうか。

福原 ふだんは紅いテントで上演しますが、今回は劇場です。唐十郎の名前は知っているけれど観たことがないという方も、この公演から唐組の世界に足を踏み入れていただければと思います。

若手の元気な舞台をお楽しみください。

──お客様へのメッセージをお願いします

加藤 若手公演ということで、唐組の若手が舞台で元気にあばれようとお待ちしていますので、どうぞお越しください。お待ちしています。



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